NPB通算97勝の久保康友はドイツにいた 「チームが『選手募集!』を貼り出してたんです。バイトのあれと一緒」 (4ページ目)

  • 鈴木智貴●取材・文・撮影 text & photo by Suzuki Toshiki

 144キロって、このチームでも速いほうなんですけど、デイヴィットは『スピードガンがない』って言いだして。え? スピードガンがなくても、見たら速いのわかるやん(笑)!

 でも、日本人スタッフの方の『日本のプロ野球で活躍してきた選手だよ』って進言があったから、デイヴィッドも『そうか!』となって話を聞いてくれたんです。言葉の問題で僕もコミュニケーションは取れなかったんですけど、日本人スタッフの方が通訳してくれたことで入団が決まりました」

── 移籍先として、ほかにも選択肢はあったのですか?

「チェコのチームからも話はありました。あと、さっき言ったドーレン・ワイルド・ファーマーズからも。これくらいのレベルのところとは、いくつか話はしていたんです」

── そのなかでハンブルクを選んだ理由は?

「移動のしやすさです。どこにでも行けるじゃないですか? 観光優先なんで(笑)。主要鉄道駅と空港がありますし」

── それにしても「入団募集」がキッカケだとは驚きました。

「そういう世界なんですよね。『お、募集しとるわ』と思って入団(笑)。僕も知らなかったですからね。面白いでしょ?」

── NPB経験者が応募してくるなんて、誰も思わないでしょうね。

「だってもう、僕が遊び感覚でやっていますから。でも、チームのみんなは真剣にやっていますよ。常に本気で、優勝を目指すためにやっていますし。もしかしたら日本人よりも、彼らは野球が好き。それはドイツに来て、すんごい心が震えたことでした。

 彼らは普通の仕事をして、それで稼いだものを全部、野球に費やしています。移動とか用具とか全部、自分たちで払うので、それでも野球をやりたい人たちなんだなと思って。すんごい心が震えましたし、同時に痛くもなりました」

── 心が痛くなった?

「痛いですよ。だって僕は観光気分だし、ほぼ遊びなので(苦笑)。あと、日本のプロ野球選手に野球そのものを好きな人っていうのはほとんどいないんだな......っていうのも理解しました。

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