阪神快進撃の陰に木浪聖也あり 恩師が分析する活躍の理由と「東北人」らしい素顔 (3ページ目)

  • 安部昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Koike Yoshihiro

「プレースタイルもがむしゃらにいくんじゃなくて、身のこなしがきれいでスマート。でも、ここ一番の場面ではパッとギアが入る」

 三塁側のファウルグラウンドに上がった高い打球を、フェンスに体当たりせんばかりの猛烈なスライディングでスーパーキャッチ。そんなシーンをプロの実戦のなかで何度か見た。

「もしかしたら......」

 長谷川氏は一瞬ためらいながらも、こう続けた。

「まあ、プロですからね。レギュラーの椅子を用意してもらったってことはないんでしょうけど、ある程度、続けて使ってもらっているなかで、ホンダのレギュラー時代の思いきりよく大胆に、のびのび野球をやれているという感覚がよみがえったのかもしれない。そういう場面を最近よく見かけるんです」

 5月25日のヤクルト戦(神宮球場)、6回一死一、二塁から塩見泰隆が放ったセンターに抜けそうな強烈な打球を目いっぱい伸ばしたグラブに納め、ベースカバーの二塁手にトスして封殺。チームのピンチを救った。あれは、心身ともほとばしるほどの勢いのある選手にしかできないプレーだと思った。

「社会人もそうですけど、プロはそれ以上にひとつのミスが命とりになる。そこにつけ込んで、一気に攻められる。ショートは守りの要ですから、そこだけは気をつけてほしい。木浪が守っていれば、守備範囲の打球は確実にアウトにしてくれる。バッテリーから信頼されるような、そういうショートになってくれたらって思いますね」(長谷川氏)

 大谷翔平、佐々木朗希といった、東北が生んだ2つの巨星がきらびやかに輝くその傍らで、渋く光を発する木浪のような存在も、またひとつの「東北の星」なのであろう。

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