「栗山英樹監督の勝負勘がさえていた証」村上宗隆と吉田正尚の打順入れ替えに成功 岩村明憲が指摘する準決勝の課題 (2ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Kyodo News

 岡本選手は慣れている東京ドームで、少し泳がされながらもスタンドまで持っていける打ち方をしていました。さすが5年連続30本以上ホームランを打っている打者だと感じました。

【村上宗隆の完全復調】

 2点差に迫られた5回裏には、村上選手にタイムリーが出ました。1次ラウンドで打率1割台と苦しんでいた村上選手ですが、これまでは打つべく球を見逃していました。それで不利なカウントになり、手を出さなくてもいい球を打って凡退していました。イタリア戦の第1打席も3ボール2ストライクから際どい球を見逃そうとして、"バットコール(悪い判定)"になってしまった。そうした消極性が悪い方向へつながっている印象がありました。

 そういった意味で、5回に飛び出した二塁打はものすごく大きかった。試合を見ながら、「"今後のためにも"センターから逆方向(レフト方向)に打ってほしい」とずっと思っていました。

 今後のためというのは、2つの意味があります。1つは、準決勝以降を見据えてのことです。準決勝の相手は、メキシコとプエルトリコの勝者になりますが、いずれもバリバリのメジャーリーガーを擁するチームです。この1次ラウンド、準々決勝で対戦してきたよりはるかに上のレベルのピッチャーが登板してきます。

 そしてもう1つはご存知のとおり、村上選手は「将来、メジャーに行きたい」と公言しています。今回のWBCに個人的な理由を持ち込むことは絶対ないと思いますが、「こういうピッチャーを打てない限り、自分の夢につながらない」という気持ちはどこかにあるでしょう。

 村上選手のいい時というのは、センターから逆方向への打球が多い。この試合で放ったヒットはいずれもセンターから逆方向への打球で、村上選手らしい会心の当たりでした。調子の上がらないままアメリカに行くのと、復調して行くのとでは気分的にもまったく違います。

 もちろん、村上選手のなかには今大会初めて4番から外された悔しさもあったはずです。昨年三冠王を獲り、日本で一番多くホームランを打ったバッターですから。4番を外された反骨心が、いい方向に働きましたね。その村上選手に代わって4番に入った吉田選手もさすがの一発でした。

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