阪神・岡田彰布監督の「魔法の言葉」で関本賢太郎は長距離砲を断念。「お前、勘違いしたらあかんで」 (3ページ目)

  • 浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo
  • Photo by Sankei Visual

――岡田監督の下で野球をする中で、新しい発見はありましたか?

関本 バッターのセオリーと、バッテリーのセオリーは違うということです。バッティングをする上で、バッターの考え方を重視しすぎると打てない。もっとバッテリーの考え方に歩み寄って、「ピッチャーが投げたい、バッテリーが攻めたいコースを狙っていけ」ということですね。バッティングフォームといった技術に関することよりも、心理面のアドバイスが多かった記憶があります。

――まずは「敵を知る」ということですね。

関本 そうですね。例えば、バッターが犠牲フライを打ちたい場面だと、一般的には「打球を上げやすい高めのボールを打ったほうがいい」と言われることが多いですよね。でも相手バッテリーからすれば、犠牲フライを打たれたくないから高めには投げない。アウトコースいっぱいの低めに投げて、犠牲フライを打たせないようにするだろうから、岡田さんからは「アウトコースの低めを狙って、ゴロでヒットを打て」という指示が出る。

 ランナーが一塁にいて、エンドランを決めたい場合もそうです。相手のバッテリーは(右打者の場合は)右打ちしにくいインコースにボールを投げてくるので、それでも無理やり右打ちをしようとするから相手の術中にはまる。「右打ちをしにくいボールがくるということは、引っ張りやすいボールなんだから引っ張れ」と言われるわけです。

 もちろん"教科書通り"の基本的な考え方も持っている方ですが、まったく逆の考え方も多い。野球に教科書があるとするならば、その教科書の内容と岡田さんの考えが同じ割合は50%くらい、という感じですかね。

(後編:2005年阪神VS中日の伝説の天王山。岡田彰布は判定に激怒、サヨナラ負けのピンチで投手に「むちゃくちゃしたれ」>>)

【プロフィール】
関本賢太郎(せきもと・けんたろう)

1978年8月26日生まれ、奈良県出身。天理高校3年時に夏の甲子園大会に出場。1996年のドラフト2位で阪神タイガースに指名され、4年目の2000年に1軍初出場。2004年には2番打者として定着し、打率.316の高打率を記録した。2007年には804連続守備機会無失策のセ・リーグ新記録を樹立。2010年以降は勝負強さを買われ代打の神様として勝負所で起用される。2015年限りで現役を引退後、解説者などで活躍している。通算1272試合に出場、807安打、48本塁打、312打点。

プロフィール

  • 浜田哲男

    浜田哲男 (はまだ・てつお)

    千葉県出身。専修大学を卒業後、広告業界でのマーケティングプランナー・ライター業を経て独立。『ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)』の取材をはじめ、複数のスポーツ・エンタメ系メディアで企画・編集・執筆に携わる。『Sportiva(スポルティーバ)』で「野球人生を変えた名将の言動」を連載中。『カレーの世界史』(SBビジュアル新書)など幅広いジャンルでの編集協力も多数。

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