平石洋介は西武の復権へ「チームをガラッと変えないといけない」。山川穂高、源田壮亮ら中堅に望むこと (2ページ目)

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki
  • photo by Koike Yoshihiro

 二度の盗塁王を獲得するなど走力が持ち味の金子侑司が、内野ゴロを打った瞬間にアウトと決めつけ流しながらファーストベースへ走っていた。平石は西武のコーチとなってすぐにそのことを指摘すると、金子は「もう抜きません。約束します」と宣言し、その足に息吹を吹き込み走ってくれた。

 自分が受け持つバッティング面にしてもそうだ。くすぶっていた愛斗に、ピッチャーによってバットを短く持つ必要性など柔軟な姿勢を説き、脱皮のきっかけを与えた。

 西武を指導して1年。まだ気質がぬるかったとしても、しっかり伝えれば選手に響く。平石にはその実感があった。

 そのチームは昨シーズン、リーグトップの防御率2.75と投手陣の安定により、最下位から3位まで浮上した。潜在能力はある。

「ライオンズの戦力が充実していたかと言えば、そうじゃなかったと思うんです。でも、3位までいけた。首位との差もそんなになかった。だから、『もうひとつ工夫できれば』って考え方もできますよね」

 優勝したオリックスとの「3.5ゲーム差」を埋める工夫とは、攻撃陣を指している。

【平良海馬の決断も後押し】

 それは、リーグ最下位だったチーム打率.229の底上げだけではない。金子に促したように、走塁をもっと浸透させる必要がある。常に次の塁を狙う姿勢も攻撃だし、それらが集結して初めて得点力もアップする。

「去年はそういう部分が甘かった場面がいっぱいあったんでね。絶対に隙を見せてはいけない。むしろ、相手が隙を見せたら突いていく。打つだけでなく、そこでも攻めていかないとね」

 昨シーズンまで西武を指揮した辻発彦は、強力な「山賊打線」を築き上げた功労者である。だが、いつまでもそこに甘えてばかりはいられないのだと、平石は強調するのだ。この姿勢を真っ先に示した男こそ、新監督となった松井だった。

「チームをガラッと変えないといけない」

 昨シーズンの西武の戦いからバッティングコーチの平石が感じていたことを、当然のようにヘッドコーチだった松井も懸案事項としてとらえていた。だからこそ、シーズン後の秋季キャンプでは個人のレベルアップよりもチームの連携に時間を割いた。ヘッドコーチとなった平石も、前年同様にウォーミングアップへの意識を高めさせ、選手の体に染み込ませる。

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