門田博光と村田兆治の名勝負は「うらやましかった」。星野伸之が振り返る「170cmの大打者」との対戦とその素顔 (2ページ目)

  • 浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo
  • Photo by Sankei Visual

――星野さんはカーブで緩急をつけ、真っ直ぐを速く感じさせるコンビネーションが武器だったと思いますが、門田さんにそのような攻め方はしなかったんですか? 以前、石毛宏典(元西武など)さんとその話をした際、星野さんのカーブの後に投げてくる真っ直ぐは「速く感じた」と話していました。

星野 対戦した選手の中には、そう言っていただく方も多いのですが、門田さんのあの豪快なフルスイングを見ていると、「少しでも間違えたら一発がある」と思わざるを得ないんです。あのスイングであれば、少し詰まっていてもスタンドまで運ばれる恐怖感があった。外に投げても、内に投げても打たれるイメージが湧いてしまうので、少しでも抑えられる可能性が高そうなカーブばかり投げていました。

 あと、門田さんが打つと、チーム全体が乗ってくるイメージがすごくありました。だから、門田さんの前にはランナーを出さないようにしよう、といったことばっかり考えていましたね。

――門田さんのスイングはそれほどに脅威だったんですね。

星野 常にフルスイングで、スイングがめちゃくちゃ速かったです。南海時代はもちろん、門田さんがオリックスに移籍した時は40歳を超えていたのに、豪快なスイングは健在でした。「ヒットの延長がホームラン」と話すバッターは多いですが、門田さんは「ヒットはホームランの打ち損じや」と言っていましたね。それぐらいの意識でなければ、あれだけホームランを打つことは難しいんだと思いました。

――ちなみに、星野さんが門田さんにホームランを打たれたことは?

星野 たぶん打たれていないはずです。門田さんにはカーブばかり投げていましたし、ほとんどボール球だったと思うので。たまに真っ直ぐを投げる時も、ストライクゾーンを外していましたから。

 プロ入り4年目から僕はフォークも覚えたので、カーブ、フォーク、カーブ、フォークという感じでした(笑)。ヒットはいいとして、とにかくホームランだけは打たれないように気をつけていました。

――1989、90年はオリックスのチームメイトになりましたが、その時に、門田さんとの対戦でカーブばかり投げていたことに対して何か言われましたか?

星野 それはありませんでしたが、たぶん門田さんは、意地でも真っ直ぐのタイミングで待っていたはずです。心の中で「真っ直ぐを投げてこいよ」と思っていたんじゃないかと。ただ、僕の場合は真っすぐが120km台だったので、門田さんも面と向かっては言えなかったのかもしれません。「球が遅いんだから、緩急をつけなきゃ抑えられないよな」と納得してくれていたのかもしれませんね。

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