髙津臣吾監督と真中満が語り尽くすリーグ連覇の裏側。3年目・長岡秀樹を使い続けた理由、先発投手陣の悩み、山田哲人への注文も (3ページ目)

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi
  • 田中 亘●撮影 photo by Tanaka Wataru

【2022年の打線を振り返る】

真中 打線で言えば、ちょっと気になったのが山田哲人ですよね。キャプテンとしていろいろ大変だったと思うけど、なかなかシーズンを通じて波に乗ることができなかった。監督から見て、2022年の山田はどう思いますか?

髙津 もちろん、満足はしていないですよ。本人だって決して満足していないと思う。だけど、出塁率(.333)やOPS(.790)を見ると、哲人の場合は選球眼がよくてきちんとフォアボールを選ぶことができる。

 そんなバッターが四番・村上の前にいると、得点力はかなり上がります。だから、「三番・山田」は動かしたくなかったんです。でも、真中さんもよく知っているように、僕らが知っている山田哲人はこんなもんじゃない。「もっと、もっと」という思いは確かにありますけどね。

真中 確かに、山田はこんなもんじゃないですよね。彼にはまだまだ頑張ってもらわなければいけないし。あと、中村悠平が故障のために開幕に間に合わなかった。その点も、僕はちょっと不安だったんですけど、監督はいかがでしたか?

この記事に関連する写真を見る髙津 あのケガは本当に痛かったなぁ。結果的に開幕戦を古賀優大に任せて、その後は内山壮真が出てきて、彼らが成長するきっかけにはなったけど、開幕戦に中村がいなかったというのはチームにとってはすごく痛手でした。

 でも、ゴールデンウイーク(5月3日対阪神戦)には戻ってきてくれたし、チーム状況もいい時期だったので、スムーズにゲームに入ることができたのは幸いでした。

真中 外野陣に関しては、ドミンゴ・サンタナが故障して途中帰国したり、青木宣親の調子がなかなか上がらなかったりはあったけれど、山崎晃大朗やルーキーの丸山和郁が頑張ったりしながら進みましたね。2023年も外野手はほぼ固定ですか?

髙津 普通にやってくれればセンター・塩見泰隆、ライト・サンタナは固定できると思うので、あとはレフトですね。基本的には青木や山崎で、と思いますが、その他のアイディアもあります。

 守備力を求めるのか、足を求めるのか、打つほうを求めるのか? 考えなければいけないことはいくつもあるし、打順との兼ね合いもあるので、いろいろ考えてはいます。まだ言えないけど、ちょっと温めているアイディアもあるんです(笑)。

真中 おっ、いいですね。「これしか選択肢はない」というのではなく、いろいろなオプションが考えられるのは幸せなことですよね。

第2回<コロナ感染の大量離脱を振り返り「あの頃は本当に厳しかった」。ヤクルト髙津臣吾が真中満に明かす自宅療養中に考えていたこと>につづく

【プロフィール】
髙津臣吾 たかつ・しんご 
1968年、広島県生まれ。広島工高、亜細亜大を卒業後、1990年ドラフト3位でヤクルトスワローズに入団。守護神として活躍し、4度の最優秀救援投手に輝く。2004年、MLBシカゴ・ホワイトソックスへ移籍。その後、ヤクルト復帰や、韓国、台湾のプロ野球、独立リーグ・新潟アルビレックスBCを経て、2012年に現役引退。ヤクルトの一軍投手コーチや二軍監督を務めたのち、2020年から一軍監督に就任。2021年は日本一、2022年はリーグ連覇を達成。

真中満 まなか・みつる 
1971年、栃木県生まれ。宇都宮学園、日本大を卒業後、1992年ドラフト3位でヤクルトスワローズに入団。2001年には打率.312でリーグ優勝、日本一に貢献した。計4回の日本一を経験し、08年に現役引退。その後、ヤクルトの一軍チーフ打撃コーチなどを経て、監督に就任。15年にはチームをリーグ優勝に導いた。現在は、野球解説者として活躍している。

【著者プロフィール】
長谷川晶一 はせがわ・しょういち 
1970年5月13日生まれ。早稲田大学商学部卒。出版社勤務を経て、2003年からノンフィクションライターとして、主に野球をテーマとして活動。2005年よりプロ野球12球団すべてのファンクラブに入会し続ける、世界でただひとりの「12球団ファンクラブ評論家(R)」。主な著書として、1992年、翌1993年の日本シリーズの死闘を描いた『詰むや、詰まざるや 森・西武vs野村・ヤクルトの2年間』(インプレス)、『プロ野球語辞典シリーズ』(誠文堂新光社)、『プロ野球ヒストリー大事典』(朝日新聞出版)。また、生前の野村克也氏の最晩年の肉声を記録した『弱い男』(星海社新書)の構成、『野村克也全語録』(プレジデント社)の解説も担当する。

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