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元審判員が選出する「本当にすごいと思った名投手」。松坂、ダルビッシュ、大谷よりもすごい5人とは?【2022年人気記事】 (2ページ目)

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi
  • photo by Sankei Visual

超一流のボールの出し入れ

吉見一起(元中日)

 スライダー、シュートを持ち球とする吉見投手は、「空振り三振」よりも「ゴロを打たせる天才」でした。

 とくに右打者の内角のボールゾーンからストライクになるスライダー、外角のストライクゾーンからボール球になるスライダーは絶品でした。吉見投手のスライダーは、ストレートと思い違いをしてしまうほど、ホームベース通過直前ギリギリまで曲がってこない。思わず「ストライク!」と右手を上げてしまったことがありました。

 吉見投手は2008年から5年連続2ケタ勝利を挙げ、そのうち2009年と2011年が最多勝。ただヒジを痛めたことで、意外にも100勝に届いていません(通算90勝)。ケガがなければ何勝していたんだろうと思うほど、完成度の高い投手でした。

金子千尋(日本ハム)

 当時、セ・リーグを代表するのが吉見投手なら、パ・リーグを代表するのが金子投手(当時・オリックス→現・日本ハム)でした。ふたりとも社会人野球のトヨタ自動車を経てのプロ入りだったのですが、ボールの出し入れで勝負するという点ですごく似たタイプの投手でした。

 同時期、パ・リーグにはダルビッシュ有投手(当時・日本ハム→現・カブス)という圧倒的な投手がいて、日本ハムの大エースとして君臨していました。

 一方の金子投手は、時折リタイアする印象があったのですが、私のなかではダルビッシュ投手よりも上だと思っていました。それはなぜかというと、ダルビッシュ投手は四球で崩れる試合があったのですが、金子投手はそれがなかった。

 しかも多彩な変化球を自在に操り、バッターに的を絞らせなかった。また、身長180センチ、体重77キロのスマートな体でしたが、球質はズシリと重かった。

 ストレートも変化球も腕の振りがほとんど一緒で、球持ちもいい。審判からすると、ジャッジするタイミングを合わせづらい投手でした。ということは、打者も絶対に打ちづらいはず。ボールのキレという意味で、最高の投手でした。

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