球審が見た完全試合、ロッテ佐々木朗希の105球。「やはりモノが違う」「球場は普通の状態ではなかった」 (4ページ目)

  • 水道博●文 text by Suido Hirohi
  • photo by Sankei Visual

── 全105球。ストレート64球(最速164キロ)、フォーク36球、カーブ3球、スライダー2球。1試合19奪三振の野田浩司投手(オリックスほか)が解説していましたが、「ベース板を外れるフォークを打者が飛びついて振りにいくのだから、相当キレがいい。四球がないのだから、相当コントロールがいい」と。

橘髙 すべての球種に関してキレがよかったです。プロの打者がワンバウンドを振りにいくのだから、よほどキレがよかったのだと試合後にあらためて思いました。ストライク率がどのくらいか、気になりますね。(全105球中、ボール球は23球、ストライク率は78パーセント)。

【試合後の感想は「無事に終わった」】

── 完全試合の瞬間、どう思いましたか?

橘髙 最終打者は空振り三振。「試合終了。無事に終わった」という安堵感がまず球審としての最初の思いでした。次に「(佐々木投手)完全試合、やっちゃったよ。すごいな」という感想でした。球場内の歓声もすごかったですしね。試合終了後、審判控室で塁審を務めた人たちと「完全試合、すごい球だったね」という話をしました。私は選手個々の記録達成に感情的にならないほうなのですが、1994年の槙原寛己投手(巨人)以来、じつに28年ぶりですものね。夜、スポーツニュースでも試合を振り返りました。

── この試合以後、佐々木投手の登板試合にマスクをかぶることはありましたか? 完全試合の日と比べて、投球内容の変化は見られましたか? スライダーを増やしたようですが......。

橘髙 5月13日のオリックス戦(京セラドーム)で佐々木投手が7回7奪三振1失点で4勝目を挙げた試合、私は再び球審としてジャッジしました。完全試合の投球を10とすると、その日は9とか8以下に力を抑え気味だった気がします。逆に言えば、完全試合の日は、ものすごくよかったということでしょう。

── 通算3001試合出場の橘髙審判がジャッジした記憶のなかでも、五指に入る試合だったと思います。今後、佐々木投手に期待することは?

橘髙 1985年ウエスタン・リーグの阪急戦で審判員として初出場した試合、一軍初球審の試合、2003年に日本シリーズ(阪神対ダイエー第4戦/甲子園)で初球審した試合とともに、自分の胸と脳裏に刻まれることと思います。佐々木投手が再び完全試合やノーヒット・ノーランを達成するか否かは別として、今後も剛球を投じ、プロ野球ファンを魅了してもらいたいです。

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