球審が見た完全試合、ロッテ佐々木朗希の105球。「やはりモノが違う」「球場は普通の状態ではなかった」 (3ページ目)
── 吉田選手も意表を突かれた配球だったということなんでしょうね。高卒1年目の松川虎生捕手とのバッテリー。吉田選手の直前のバレラ選手をストレートで見逃し三振に打ちとり、佐々木投手が「お前のリード(球種の選択)は正しかったよ」の仕草をしました。後日、佐々木投手は松川捕手のリードを「オシャレ」と表現しました。橘髙審判は元プロ野球選手です。同じ捕手として、松川捕手をどう感じましたか?
橘髙 すごいなと思いますよ。前述のとおり、開幕カードで(最速164キロ、150キロに迫るフォークを)上手に捕るのを、捕球がよく見える二塁塁審として見ていました。大学出身 の捕手か社会人出身の捕手かと思ったくらいです。完全試合の試合もワンバウンドになるフォークを止めていました。球審としても投球を見やすい構えで、いい捕手だと思います。
── 三回り目。このあたりから、球場全体が大記録を意識し始めました。7回表無死、1番・後藤駿太選手(現・中日)に対して、唯一の3ボールになりました(ボール、ボール、ボール、158キロ見逃しストライク、158ストレートをライトフライ)。
橘髙 その時点で完全試合が継続中だったことは私自身、認識していました。どちらかのチームの肩を持つということではなく、正直、心の中では「ストライク来い」と思いました。
── それは球場にいた全員が思っていたかもしれませんね。最終打者・杉本裕太郎選手を迎えた時の球場の雰囲気をどう感じましたか?
橘髙 9回先頭打者から、明らかに普通の状態ではなかったです。まるで優勝決定試合の「このイニングで優勝が決まる」という時にも似た、ざわつきがありました。この試合は6対0と大差もついていたことから、球場全体のお客さんが完全試合の瞬間を経験したいような雰囲気でしたね。最終打者になった杉本選手への初球、ストライクのコールから、ざわつきがさらに大きくなりました。
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