広岡達朗が中日・立浪監督が断行した大型トレードに言及。「一番やってはいけないことは感情論で選手を放り出すことだ」 (2ページ目)

  • 松永多佳倫●文 text by Matsunaga Takarin
  • photo by Koike Yoshihiro

 かつて星野仙一が阪神監督就任1年目(2002年)のオフに、20人以上の選手をトレードや戦力外通告をして血の入れ替えを行なった。おそらく立浪監督も、チームを劇的に変えるべく、心を鬼にしてトレードを断行したのだろう。

 当然、立浪監督の「何かを変えなければいけない」ということについて広岡も理解は示しているが、それでも異を唱えているのはこんな理由からだ。

「立浪が言うように、トレードとは双方の弱点を補うためのものだ。それが主力同士であればいいが、33歳の野手の阿部と36歳の投手の涌井とでは、どう見ても中日のほうが損に思えてしまう。トレードで一番やってはならんことは、感情論で選手を放り出すことだ。

 ヤクルトの監督時代、優勝した年に39本塁打を放ったチャーリー・マニエルをトレードに出した時もいろいろ言われたが、あの時は感情論で出したわけではない。いくらホームランを打とうが、守れない、走れない選手はいらない。1978年に日本一になってから、本当の意味でチーム編成ができると考えて、ディフェンシブなチームづくりに着手し、マニエルと永尾(泰憲)と近鉄の投手1人、野手2人の2対3の交換トレードをしたんだ」

 球団初の日本一の立役者であるマニエルをトレードで出したことは、当時球界で騒然となった。結果はさておき、監督だった広岡には確固たるチーム戦略と強い意志があった。当然、立浪監督も「まずは投手を整備することが急務だと考えた」と言っているように、目指すべき野球の形はわかる。

【立浪監督の心意気には理解】

 ただ一方で、ファンが危惧しているのは打線の問題である。今シーズン、中日はチーム防御率3.28(リーグ2位)と投手陣は結果を出したが、得点、チーム本塁打ともに12球団ワースト。言うまでもなく、投高打低のチームである。そのストロングポイントをさらに強くしたいという気持ちもわかるが、まずは貧打解消が最優先課題ではないか。主力の野手2人を出す必要が本当にあったのか。

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