「最後の近鉄戦士」坂口智隆の引退に喪失感。OB磯部公一が語る、いてまえ打線「天才はいなかったけど、練習量がすごかった」 (3ページ目)

  • 栗田シメイ●取材・文・撮影 text by Kurita Shimei
  • photo by Sankei Visual

――来季は礒部さんも交流が深い松井稼頭央さんが、ライオンズで指揮を執ります。どんな野球を志向するとみていますか?

礒部:「稼頭央は野球に対して驚くほどストイック。若さもあり、球団も2軍監督まで経験させていることから、長期的に任せたいと思っているはずです。よく選手と話すし、コミュニケーションもうまいので、来年はある程度若手を使いつつ、その中でリーダーになれるような選手を作っていく部分もあるのではないかな、と。基本的には若い野手を育てながら、攻撃面から手をつけていくとみています」

――また、同じ年の三浦大輔さんもDeNAで結果を残していますね。

礒部:大輔は"番長"なんて呼ばれていますが、すごく優しい男なんですよ。温厚で繊細。もともとDeNAは投手陣が課題でしたが、大輔が監督になってからは自分の経験をふまえて投手陣と密にコミュニケーションをとりながら、うまく投手陣を立て直したと思いますね。頭が柔軟で、人に任せるところは任せる。ヘッドコーチ(来季は巡回コーチ)の青山道雄さんに全体の補佐、参謀をしてもらいながら、野手は打撃コーチに任せるという。そういったバランス感覚と柔軟性が大輔の能力だと思いますね」

――今後も期待ですね。礒部さんは球団再編後に楽天でプレーされていますが、あらためて近鉄というチームのカラーはどういうものだと捉えていますか?

礒部:「近鉄はアットホームというか、関わる人みんながファミリーのような感覚でした。裏方さんはもちろん、親会社の人や出入り業者まで知っているというような。大阪ノリみたいなところもやっぱりあって、仰木彬監督の時は、ビールのイッキ飲みの速さでスタメンを決めるようなこともありましたね(笑)。

 ただ、オンとオフの切り替えがうまいチームで、オフはすごく庶民派でした。大阪の普通の居酒屋で、吉岡雄二さん、タフィー(ローズ)に僕、たまにノリみたいなメンツでよく飲んで、その後はカラオケにみたいな。タフィーの歌がとんでもなく下手だったのはよく覚えています(笑)。そんなタフィーも野球になると非常に研究熱心で、相手投手の分析をすごくする男でした。タフィーは普段グリップが細いバットを好んでいましたが、シュートを多投する左投手と対戦する時は、私のところに来て『バットを交換してくれ』というんですよ。それで本当に打っちゃうから『すごいな』と。特に打つことに関しては球団全体で、そういった求道者的な空気感がありました」

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