広岡達朗は新庄剛志が目指す野球には及第点も「監督自らCMに出るようなバカなチームがどこの世界にあるんだ!」 (2ページ目)

  • 松永多佳倫●文 text by Matsunaga Takarin
  • photo by Koike Yoshihiro

 今季の日本ハムは松本剛が首位打者のタイトルを獲得したが、プロ11年目、29歳の遅咲きプレーヤーだ。令和初の三冠王を獲得した村上宗隆(ヤクルト)と同級生の清宮幸太郎は、今季18本塁打を放ち、ようやく兆しが見えてきた。

 投手陣は2年目の伊藤大海が2ケタ勝利(10勝)をマーク、サウスポーの加藤貴之が8勝、エース格の上沢直之も8勝を挙げたが、小粒感は否めない。

 唯一の"チームの顔"と言える存在である近藤健介も、今シーズンはケガの影響もあって99試合の出場にとどまり、さらにこのオフにはFA権を行使して他球団に移籍する可能性がある。

 いずれにしても、監督が目立つようではまだまだチームとして成り立っていないと広岡は強く言う。

監督は裏の裏まで把握すべき

「ヤクルトの監督時代、巨人の助っ人だった(ジョン・)シピンはインコースを投げるとよく威嚇してきた。そうするとピッチャーがビビって内角を突けないから、シピンは躊躇せず踏み込んできた。だから内野手中心に『どんな乱闘があろうとも、まずシピンを叩き潰せ!』と命令した。そしたらサードの船田(和英)が『ファーストの大杉(勝男)さんは体も顔もイカついので、先頭に立つように言ってください』と進言してきたよ。そうやってみんなが一致団結してやったもんだ。

 アメリカでは、監督が『オレが責任者だ』という言葉を発する。要するに、選手にプレーさせる以上、一番上がすべての責任を持つという意味で、現場の権限はすべて監督にある。日本はフロント主導の球団が多い。補強する選手、コーチ人事をすべてフロントで勝手にやられたら、監督はたまったもんじゃない」

 広岡はヤクルト、西武の監督時代、権限の曖昧さに身をもって経験しているだけに、「そこは改善すべき」と語気を強める。

 一説では、監督の権限はどのチームも5割に満たないと言われており、日本ハムも吉村浩チーム統括本部長、稲葉篤紀GMが主導権を握っていたが、新庄監督になってからは現場の声も反映されるようになったと囁かれている。

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