イチローの成長曲線は松永浩美の予想以上。それでも「メジャーでは苦戦する」と思っていた理由と、成功の要因も語った (2ページ目)

  • 浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo
  • photo by Sankei Visual

――イチローさんは1994年の史上初となる200安打を達成したのを皮切りに、年々すごみが増していきました。

松永 私がオリックスにいる時はイチローの背中を見て、「まだ、細いなぁ」という感じでした。私がダイエー移籍1年目(1994年)に見た時もそんなに大きく見えなかったんですが......その2年後ぐらいから、背中が「だんだん大きくなってきたな」と思うようになりました。やはり、いい選手は背中が大きく見えるもの。筋肉がどうこうとかではなく、自信があったり、オーラが出てくるとすごく大きく見えるんです。

――イチローさんがステップアップしていく様子は、予想以上でしたか?

松永 予想以上でした。「イチローは内野安打が多い」と言われていましたけど、彼は内野安打をわざと打っていた。バットの芯を外して打球を殺し、内野安打になるように。それもひとつの技術です。

 そういったように、自分の特長を活かして進化していったことが大きかったと思います。新聞などには4打数3安打と書かれますが、「そのうちの3本が内野安打」とは書かれません。ヒットはヒットです。

――メジャーに挑戦するイチローさんのことはどう見ていましたか?

松永 私が阪急で2軍にいた頃、毎年1カ月半ぐらいフロリダに行く機会があって、外国人のピッチャーと練習試合で対戦していたんです。その時にはけっこうインコースを攻められました。だからメジャーのピッチャーはインコースをどんどん突いてくるイメージがあったのですが、あまりイチローにはインコースに投げませんでしたね。乱闘のきっかけになる場合がありますし、審判がインコースではなく、真ん中外目をよくストライクにするからでしょう。

 私はそういった傾向を知らなかったので、イチローみたいに足を上げて打っていると、メジャーのピッチャーはどんどんインコースに投げてくるんじゃないかと思っていたんです。そうなると、さすがのイチローも苦戦するんじゃないかと思っていましたが......インコースが少なかったのは幸いだったでしょうし、メジャー挑戦当初から活躍できた要因のひとつだと思いますよ。

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