オリックス1年目のイチローは、伊良部秀輝のストレートに「速さを感じない」。松永浩美が振り返るレジェンドの原点 (3ページ目)
伊良部との対戦を前に「伊良部さんって速いですか?」
――イチローさんは、1992年の7月11日に一軍で初出場。同年の9月13日のスタメンは1番に松永さん、2番にイチローさんという1、2番コンビ(最初で最後)が実現しています。
松永 その試合でイチローに、「ストレートだけ待っていればいいんじゃないの」と言った記憶があります。私は阪急時代に2番を打ったこともあるのですが、そのときに1番だった福本さんに「相手は俺の足を警戒して真っ直ぐが多くなるだろうから、真っ直ぐだけ待っておけばいいぞ」と言われたんです。それと同じことをイチローに言った気がします。
――他にどんな会話をされたか覚えていますか?
松永 当時ロッテにいた伊良部秀輝が156~158kmの真っ直ぐを投げていたのですが、私は伊良部との相性がよくてけっこう打っていたんです。だからなのか、「伊良部さんって速いですか?」とイチローが聞いてきて。「いや、速いと思ったことないんだよね」と答えたら、「僕も打席に立った時に、速さを感じないんですよ」って言っていました。それを聞いた時に、「この子は速い真っ直ぐで怖気づくようなタイプじゃないんだな」とわかりました。
――当時の松永さんはチームの主力で、イチローさんからすればひと回り以上歳上の大先輩でもありました。
松永 イチローは私のことを間違いなく怖がっていたと思います(笑)。ただ、"怖さを感じさせる"選手はチームに必要です。たとえば、試合で緊迫した場面などで、経験がない若い選手はちょっと臆するところがある。だけど、「(怖いけど頼れる)この人がチームにいるから大丈夫だ」という拠りどころがあると、思いきったプレーができますし、チームがまとまるんです。
――松永さんは1993年は阪神、その翌年からはダイエーでプレー。イチローさんと同じチームにいたのは1年間でしたね。
松永 そうですね。だから、話す機会もあまりなかったです。ただ、イチローはよく"デカ(高橋智の愛称)"と一緒にいて、デカのロッカーが私の隣りだったので、ふたりが仲良さそうに話している光景はよく見ましたよ。
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