斎藤佑樹が「野球の神様」の存在を信じた伝説の甲子園決勝。駒苫の4番を迷わせた死球とフルカウントからのフォーク (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Okazawa Katsuro

 だから、すごく甘いコースにいっても打たれないとか、めちゃめちゃ厳しいところにいったのに打たれたりとか、あの時みたいに打たれたけど風を吹かせてくれるとか、野球ではなかなか起こり得ないことを平気で演出する。

 それは野球の神様が野球ではなく、人間を見ているからだと思います。僕は、自分がいいと思った信念がぶれないよう、結果に関係なく、我慢してやり続けることが大事だと信じたい。そうすれば、野球の神様が味方してくれると思っているんです。

1−1のまま延長戦に突入

 初回をゼロで抑えたことで、2回以降、僕はリズムをつかみました。フォアボールこそ出してしまいますが、ヒットは打たれません。4回、フォアボールで歩かせた本間くんに二盗、三盗を決められてピンチを背負いますが、5番の鷲谷(修也)くんをスライダーで、6番のマー君(田中将大)をフォークで三振に抑えました。

 あの試合では狙って三振がとれていました。ワンストライクをこの球でとって、ツーストライクはこの球で、最後、三振はこの球で取ろうというイメージがハッキリできあがっていた。それだけマウンドで自信があったんだと思います。

 駒大苫小牧の先発は2年生の菊地(翔太)くんで、マー君は3回の途中、ワンアウト1、2塁の場面で出てきました。ここは小柳(竜巳)、檜垣(皓次郎)が続けて三振を喫して点をとることはできませんでしたが、正直、2年秋の明治神宮大会のイメージからするとマー君の調子はいまひとつだったと思います。それでも「ここぞ!」というところではギアを一段も二段も上げてきますから、早実もなかなか点を奪うことができません。

 0−0のまま、8回表を迎えました。僕はここまで1安打ピッチングを続けていたんですが、ワンアウトから2番の三木(悠也)くんに痛恨の一発を打たれてしまいます。初球、外角を狙ったストレートが真ん中に吸い込まれてしまいました。三木くんはこの球を見逃してはくれません。高々と舞い上がった打球はセンターのバックスクリーンに飛び込むホームランとなって、均衡が破れます。

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