村上宗隆は「僕の監督時代に入団してほしかった」。真中満が見抜いた三冠王の進化と印象的だった人間性 (3ページ目)

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi

自分の成績よりも「チーム最優先」の人間性

ーー最初にお話があったように、真中さんと村上選手とは入れ違いとなりましたが、取材、評論活動を通じて、村上選手にはどんな印象を持っていますか?

 今はグラウンドに降りて、直接話をできる機会がないから、あくまでも外から見た感想でしかないけど、印象的だったのが先ほども話題に出た55号ホームランを打った時の彼の姿なんですよ。あの日のジャイアンツ戦で54号、55号を打ったけど、結局試合は負けてしまった。あの時の表情に、彼の人間性が出ていた気がしますね。

ーー節目の一発を放ったものの、チームは負けてしまったことで、悔しそうな表情をにじませていましたね。

 あの姿は決して、他人の目を意識した作られた姿じゃなくて、「素顔の村上宗隆」だったと思うんです。決して演出ではなかった。自分の記録よりも、チームの勝利を最優先している姿。勝つことに徹している姿。ここに村上のすごさを感じました。

ーー自分の記録よりも、チームが最優先。そんな姿は確かに印象的です。

「チームのために頑張れ」とか、「自己犠牲が大切だ」というきれいごとばっかり言うつもりはないけど、優勝争いをしている時には、やっぱり勝ち負けが第一になってきます。村上の場合は、自分が打てなくてもベンチ内で大きな声を出して味方に声援を送っている。

 チャンスで4番が凡打したら、自分に腹も立つし、相当悔しいものですよ。でも、彼の場合はそこをグッと抑えて、続く5番打者に声援を送っている。若いのに、きちんと自分の感情をコントロールできているのも立派ですよ。

ーーさぁ、これからクライマックスシリーズ、日本シリーズと本当の勝負が始まります。当然、村上選手にも期待が集まりますね。

 シーズン終盤は優勝争いや、三冠王、ホームラン記録など、さまざまな重圧もあって苦しんだけど、そのすべてから解放されて、ここからはポストシーズンにだけ集中できます。極端な話、打率もホームランも何も気にしなくていい。ひたすらチームの勝利だけを目指して、自分のバッティングをすればいい。それは村上にとっても、いい結果をもたらすことになるんじゃないのかなと思いますね。

ーー球団史上初となる「日本シリーズ連覇」に向けて、村上選手の存在は絶対に欠かせませんからね。

 もちろん、村上ひとりの力だけで勝てるものではないけど、今年のヤクルトは投打のバランスもいいし、ベテランと若手もうまくかみ合っています。ぜひ、ポストシーズンでも村上のバッティングに期待して、OBとして注目したいと思いますね。

終わり 

前編<真中満が選ぶヤクルトリーグ連覇の"陰のMVP"は? 「ヤクルトの強さは本物」だが、CSは「阪神が不気味」>を読む

【プロフィール】
真中満 まなか・みつる 
1971年、栃木県生まれ。宇都宮学園、日本大を卒業後、1992年ドラフト3位でヤクルトスワローズに入団。2001年には打率.312でリーグ優勝、日本一に貢献した。計4回の日本一を経験し、2008年に現役引退。その後、ヤクルトの一軍チーフ打撃コーチなどを経て、監督に就任。2015年にはチームをリーグ優勝に導いた。現在は、野球解説者として活躍している。

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