斎藤佑樹が振り返る高校最後の夏、日大鶴ヶ丘と日大三との死闘。今でも忘れない決勝前日の父とのキャッチボール (4ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Sankei Visual

決勝戦初回にいきなり2失点

 そういえば三高との試合前日、国分寺の家の近くの公園で父とキャッチボールをした記憶があります。なぜそういう流れになったのかは覚えていないんですが、おそらく大会中、僕のボールがけっこう荒れていたのでそれを何とかしようということになったんだと思います。

 それこそ日鶴との準決勝で2度もワイルドピッチをしたり、ボールが上ずっていたり、変化球でストライクがとれなかったり......それを三高との試合までにちゃんと整えておこうと父が言い出したんでしょうね。そう言われた時、『こっちは疲れてるんだけどな』という気持ちも、ちょっぴりありました(笑)。

 三高との決勝、早実はまたも後攻めで、僕は1回表のマウンドに上がります。三高の1番は左バッターの荒木(郁也/のちに明大→阪神タイガース)くんでした。インハイを狙ったストレートが真ん中高めに入って、それを弾き返されました。セカンドの頭をライナーで超えた打球はあっという間に右中間を割って、いきなりのスリーベースヒットです。

 一死後、3番の佐藤(健太/のちに立正大→BCリーグ石川、福井、福島)くんにもセンター前へ打たれて、まず1点。さらに4番の田中(洋平/のちに専大)くんにもセンターの右へ低い打球のスリーベースヒットを打たれて、またも苦手な立ち上がりに2点を失ってしまいます。

*     *     *     *     *

 強打の日大三が見せた先制パンチに、ベンチにいた早実の和泉実監督は「1年前のコールド負けがパッと頭をよぎった」と言った。しかし斎藤はその悪い流れを断ち切ることになる。分岐点となったのはその直後に投げたストレートだった。

(次回へ続く)

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