「なぜこの体でこんなボールを...」。ノーヒット・ノーランであらためて思い出した東浜巨、17歳のピッチング (2ページ目)
沖縄尚学時代、2008年のセンバツで優勝した東浜巨この記事に関連する写真を見る 屋根つきのブルペンだったが、横なぐりの雨がガンガン吹き込んでくる。その時の東浜は、来月にセンバツ大会を控えた大事な時期だった。
「やめとこうか?」
もの静かで優しい物言いの少年だから、「そうですね......」といった穏やかな反応かなと思っていたら、「いや、やります!」と強い意志で返してきた。
「こりゃ、本物だ!」
むしろ、こっちの弱気に気合いを入れられたような瞬間だった。
ピッチャーとしての誠実さ
雨はおさまる気配がなく、まるでウォーターカーテンのようだった。18.44メートル先のマウンドに立つ東浜がぼんやり霞んで見える。
「じゃあ、本気で!」
「はい、もちろんです!」
リクエストしたアウトローに、すばらしい角度と回転のボールが決まった。
「ナイスボール! すばらしい! 続けろ、続けろ! 続けて、アウトローに投げる感覚、覚えちゃえ!」
「おっしっ!」
そこからがすごかった。右打者のアウトローに、3球、4球、5球......構えたミットに寸分たがわず、すばらしい回転の快速球が次々に決まる。
「続けろ! 続けろ! 続くところまで続けろ!」
スコールを切り裂くように、水しぶきを上げた140キロのアウトローを、結局9球続けた。
「ナオくん、スゴい! ベリーグー!」
受けたこっちも、「とんでもないピッチャーが出てきた」と心底驚いたものだ。
コントロールも、ボールの威力もすごい。再現性抜群の投球フォームも、間違いなく大人顔負けだったが、それ以上に、甲子園でもないのに、1球1球、魂を込めて投げ込んでくるピッチャーとしての「誠実さ」に胸を打たれた。
投げてもらったあと、せっかくだから話を聞くのは、「何か食べながらにしようか......」ということになって、あれこれと手伝ってくれたキャプテンの西銘生悟(内野手/その後、中央大→現・ホンダ鈴鹿コーチ)と3人で入ったファミリーレストランで、フルーツパフェをおかわりしながら、話は2時間半にも及んだ。
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