高木豊が厳選する「走塁がうまい」現役選手。単純に「足が速い」選手との違いはどこにあるのか? (2ページ目)
昨季のパ盗塁王・和田の改善の余地
――加速力、スライディングの観点でうまいと思う選手は?
高木 若林楽人(西武)は、今は足のケガからの復帰を目指して2軍で頑張っていますが、加速力があってスライディングもすごくうまいです。ルーキーイヤーだった昨年、44試合で20盗塁をマークしたのは伊達じゃないですよ。スタートの切り方もいいですし、何よりも上体が浮かないという特長があります。
スタート時に上体が浮いてしまうと、推進力が上に逃げてしまいます。力まずにベースに向かって推進力を持っていくためには、低い姿勢をキープする必要があるんです。荻野貴司(ロッテ)もそれができていますし、盗塁が上手いですよね。
――なるほど。確かに荻野選手もスタートを切る時点から上体が低いですね。ほかに盗塁のスタートが上手い選手は?
高木 近本もそうですけど、一昨年、ウエスタン・リーグで盗塁王になった佐藤直樹(ソフトバンク)も「うまいな」と思って見ていました。まず、投手との呼吸を合わせることがうまい。あと、これはある種のセンスなのかもわかりませんが、力みなくスッと一歩目のスタートが切れるんです。
昨年、佐藤が一軍に上がった時にはどんな走塁を見せてくれるか楽しみにしていたんですが、結局打席に立ったのは10打席ぐらいで、走る姿もほとんど見られなかったので残念でしたね(2021年は一軍で25試合に出場して1盗塁)。
――昨年、パ・リーグで盗塁王に輝いた和田選手はどうですか?
高木 スタートの切り方は悪くはないと思いますが、スライディングはあまりうまくないです。ベースに足をつく位置もあまりよくないし、勢い余ってベースを飛び出してしまうこともある。勢いがあるのはいいんですけど、スライディングのタイミングなどは改善の余地があると思いますよ。
――足の速さがある選手として五十幡選手と並木選手を挙げていましたが、両選手の走塁技術はどうですか?
高木 走るスピードは別格ですが、今はまだスピードだけに頼っている印象です。走塁というのは、"ボールの位置"によって走るコースやスライディングのコースなどを決めるものですが、そのイメージを頭の中で描けているかどうかが大事なんです。
ライト前に打球が飛んだ時、レフト線に打球が飛んだ時など、シチュエーション別にどんな走路を選ぶのかを考えて走れているかどうか。彼らの走る姿を見ていると、そこまで意識はしていないように見えます。そうした意識を持っていると感じられるのが、近本や松原、荻野なんです。
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