高木豊が厳選する「走塁がうまい」現役選手。単純に「足が速い」選手との違いはどこにあるのか?
高木豊が語る「走塁のうまさ」 前編
野球において足の速さは武器になるが、「足の速さ」と「走塁のうまさ」はイコールではない。言い換えれば、足が速くなくても走塁技術は高められる。
かつて大洋(現DeNA)他での14年間の現役生活で通算321盗塁をマークし、1984年には盗塁王にも輝いた高木豊が「走塁のうまい」現役選手を厳選。その理由や走塁で大切なことを聞いた。
高木豊が走塁を高く評価した阪神の近本(左)とロッテの荻野この記事に関連する写真を見る***
――現役選手の中で、走塁技術が優れた選手を挙げるとすれば誰になりますか?
高木豊(以下:高木) 単純な足の速さであれば、五十幡亮汰(日本ハム)と並木秀尊(ヤクルト)はズバ抜けています。周東佑京(ソフトバンク)や、昨年パ・リーグの盗塁王になった和田康士朗(ロッテ)も速い。ただ、「野球選手としての走りのうまさ」を考えると、阪神の近本光司や巨人の松原聖弥のベースランニングは目を見張るものがあります。ベースを踏む前に膨らめば膨らむほど走る距離が長くなってしまいますが、近本や松原は小さく回れるんです。
五十幡や並木、和田もそうですが、彼らはどちらかというと"陸上寄り"の走り方なんです。例えば400mリレーだと、2走や4走のように直線を走って速いタイプ。でも野球の場合はコーナーリングが重要なので、求められるのは1走や3走で力を発揮するタイプです。そういう観点で見ると、やはり近本や松原の走塁はうまいと思います。
――盗塁をするための技術とはまた違うものですか?
高木 そうですね。例えば松原の場合、盗塁技術はそこまで高くないです。盗塁数(2020年12個、2021年15個、2022年0個/4月24日試合終了時点)を今より増やしていくためには、もうちょっと投手の呼吸などを観察するといいと思います。ただ、これはいくら練習しても、実戦でスタートを切っていく場数を踏まないと難しいです。
スタートを切る時に"力み"がないことが理想ですが、牽制やアウト・セーフの判定があるとどうしても力んでしまって、思い切りよくスタートが切れません。スポーツは何でも力まないことが大切ですが、盗塁でも力みがうまく抜けていると加速力が大きくなりますし、加速力がいいスライディングにつながっていくんです。
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