160キロ投手・ソフトバンク杉山一樹の才能は開花するか。やり投げをヒントに目指す力感のないフォーム

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Jiji Photo

プロ野球2022開幕特集
ソフトバンク・杉山一樹インタビュー

 これまでNPBでプレーした日本人で、160キロを計測した投手は7人いる。ソフトバンクの大型右腕、杉山一樹は昨年5月11日のロッテ戦で記録して、そのひとりとなった。

「夢ではあったんですけどね。その頃、フォアボールが多くて。バッターを抑えることができていなかったので、仕事ができてない気持ちのほうが強かったです。ストライクが入って160キロならバッターに対する武器のひとつになると思うけど、ボール、ボール、ボールって。うれしかったはうれしかったですけど......」

2018年ドラフト2位で三菱重工広島から入団した杉山一樹2018年ドラフト2位で三菱重工広島から入団した杉山一樹この記事に関連する写真を見る ワインドアップから左足を高く上げ、193cmの長身から投げ下ろしたストレートは、右打者の内角低めに外れた。打席の荻野貴司は悠々と見逃す。3球続けてボールとなり、マウンド上の杉山は悔しそうに首を傾げた。

 1対4でリードされた8回。先発・武田翔太のあとを受けた杉山は、先頭打者に対して3ボールとし、フォアボールで歩かせた。この回は結果的に無失点で抑えたが、3四球を与えるという不安定な投球内容だった。

 160キロという"夢"の記録は、選ばれし者にしか到達できない領域だ。だが、杉山が計測したのはストライクゾーンに入らなかった1球で、不甲斐ない記憶のほうがはるかに上回った。

「規格外」「千賀滉大も認めるポテンシャル」「和製サファテ」----。

 2018年ドラフト2位で三菱重工広島からプロ入りして以来、193cm、104kgの大型右腕に周囲は大きな期待を寄せた。これほどのポテンシャルを秘めた日本人投手はなかなか見当たらず、ロマンを感じるのは当然だろう。

 一軍で2試合に登板した2019年オフ、杉山はカリブ海に浮かぶアメリカ自治領プエルトリコのウインターリーグに武者修行へ出かけた。筆者はそこで初めて見たが、ラテンの大男たちのなかでも体格的にまるで見劣りしない印象が強く残っている。

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