160キロ投手・ソフトバンク杉山一樹の才能は開花するか。やり投げをヒントに目指す力感のないフォーム (4ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Jiji Photo

千賀との時間が一番楽しい

 だが、ソフトバンクの先発ローテーション争いはハイレベルだ。エースの千賀を筆頭に、実績のある石川柊太や東浜巨、大ベテラン・和田毅と実力者がひしめく。残されたイスには、松本裕樹や田中正義、大関友久らライバルが多い。

結果的に松本と田中のアクシデントがあって開幕ローテーションの座を掴んだが、自身にとってラストテストとなる3月20日のオープン戦を4日後に控えた取材日、杉山はオンラインでこう話していた。

「開幕ローテに入れなかったら今年はダメだ、とかいう気持ちはないです。キャリアハイを出したいですし、先発できるような数字を残したいと思います。

 昨年、中継ぎの時は1イニングだったので、フォアボールやホームランを結構気にしていたけど、先発の時は波を作らないようにしていて。結果的に3回3分の2とかで交代した時がありましたけど、そういうところも今年はうまくいくんじゃないかなと思いますね」

 果たしてプロ入り4年目の今季、誰より大きなスケールを誇る右腕は飛躍を果たすことができるか。周囲はそう視線を向け、杉山自身も置かれた立場をもちろん理解している。

 それでも取材で向き合うと、取材ではマイペースを一切崩さない。人懐っこい笑みを浮かべ、独特なゆっくりした口調で自分に矢印を向けた。

「野球を楽しんで、うまくなって一番になりたい。練習も好きですし、千賀さんといる時間は野球をしていて一番楽しい時間だなと思います。自分のなかでコントロールできれば、必然的にバッターを抑えることもできると思いますしね。自分に可能性はすごく感じています」

 誰もが期待をかけたくなる大器は、穏やかな笑みを浮かべながらそう言った。杉山が自分の能力さえ発揮できれば、チャンスは必ずモノにできるだろう。

 今年こそは......と期待をかけながら、開花の時を楽しみに待ちたい。

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