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オリックス吉田凌「僕が首を振ったら、どうせスライダーだろうと」。7割、宝刀を抜き続ける甲子園優勝投手のメンタル (3ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Jiji Photo

スライダーへの絶大な信頼感

 日本シリーズの激闘が終わったあと、吉田は右肩を休めながら映像やデータを見返した。

 10球のうち7球がスライダーという投球割合は、ふたつの見方ができる。それだけスライダーに自信を持っている反面、ストレートやシュートを投げきれていない証だった。

「スライダーへの絶対的な信頼は変わらないですし、軸になるボールです。でも首を振って、真っすぐなりシュートなり、自分の引き出しを増やしたいのが、今シーズンの課題のひとつです」

 勝負がクライマックスに近づく昨年10月後半、『パ・リーグTV』は「【19球のうち16球がスライダー】吉田凌『スライダー無双』」と題した動画をアップした。タイトルどおり"宝刀"の切れ味が目を引く一方、右打者の内角に時折投じられるストレートやシュートはいずれも差し込んでいる。

「受けていて、お前の真っすぐ、いいよ」

 捕手の若月健矢や伏見寅威にもそう言われるが、吉田は「いやあ、僕、ちょっとまだよう投げんすわ」と返しているという。

「2ストライクから真っすぐがちょっと甘めでもファウルになったり、空振りをとれたり、バットをへし折って内野ゴロにすることが意外とあるので、いけるんちゃうかなと思っているけど、いざマウンドに立つと怖いなと思っちゃいます。自分のなかでスライダーで打ち取っているイメージがすごくあるので、変に違うボールをいくより、スライダーのほうがいいんじゃないかと」

 吉田にスライダーを選択させるのは、起用される場面とも関係がある。試合終盤の競った局面で投入され、自分が打たれれば先発投手の勝ちを消し、チームに逆転負けを招くかもしれない。

「1点も与えられない場面で投げるので、自分の欲だけで真っすぐをいって、ガツンはアカンなと。逆に抑えると、チームが本当に乗ってきたりします。それこそ日本シリーズでは、僕が抑えておけばという思いが非常にあるので」

 ここまで責任感を募らせるようになったのは、近年のことだ。負けたら終わりの甲子園で戦っていた高校時代は、「やってやる」という前のめりの気持ちしかなかった。

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