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「満足しているのはコーチだけ。つぶされた選手を見てきた」今岡真訪が力説するコーチのあり方 (2ページ目)

  • 菊地高広●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Sankei Visual

 2016年からの2年間、阪神の二軍コーチを務めた際に、「グラウンドで技術指導しているだけではダメだ」と痛感したという。ロッテではまず各部署が選手の育成方針を共有することからスタートし、軽視されがちな寮の食事とトレーニングの充実を図った。

「寮では毎朝体重を測って採血するようにしました。高卒3〜4年目までの選手は、疲れがたまっていれば休み、練習量を減らすこともありました。その状態で練習させても、体重が減ってしまいますから。体重が減ると言っても、元々ついている脂肪を減らすのと、トレーニングで鍛えた体重(筋力)が落ちるのとでは意味がまったく違います。そこは選手のコンディションをしっかり見極めたうえでやらないと、せっかくプログラムを組んでトレーニングしても意味がなくなります」

【大山悠輔と高山俊に抱く不安】

 育成環境については、今岡さんにとって苦い記憶がある。

「私が阪神に入った時期はチームが弱かったので、毎年のようにコーチが変わって『ああせい、こうせい』と言われるわけです。でも、結果が出なければ『考えが甘いねん』と、全部自分のせいにされてしまう。いろんな人にいろんなことを言われて選手は混乱し、満足しているのはコーチだけ。その結果、つぶされて終わった選手をたくさん見てきました。たとえば100人の選手がいて、コーチが教えまくって有能な選手に育つのはほんのわずか。残りの半分以上はつぶされたと言っても過言ではありません」

 コーチは何も教えるべきではない、という意味ではない。「選手が必要としていれば教えればいい。ただ教えすぎるのはよくない」というのが、今岡さんの考えだ。

 阪神時代の教え子である大山悠輔や高山俊を見ていると、今も特別な感情が湧くと今岡さんは言う。ふたりとも「自分と境遇がよく似ている」と感じるからだ。

「私はコーチに納得いかない指導を受けると態度に出してしまい、『生意気や』とよく言われました。高山も似たようなところがあるようで、(2016年に)新人王を獲って、周りにあれこれ注意されると態度に出て、誤解されてしまうことがあったそうなんです。今は結果を出さないとあとがないという状況のところまで来てしまいましたが、それも私とまったく一緒です。大山は誰からも愛される性格なんですが、誰に何を言われても聞き入れるタイプです。だから人の意見を気にしすぎていないか、気になります」

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