移籍しにくい日本のFA制度。2度FA宣言の谷繁元信は「選手に甘えが出てくるシステムは変えるべき」 (4ページ目)
【選手生活が終わる可能性も】
プロ野球選手は個人事業主であり、すべての責任は自分に帰する。だから谷繁氏は監督になっても、FA宣言した選手を引き止めなかった。たとえば、2015年オフに阪神タイガースに移籍した高橋聡文に対しても、本人の意思を何より尊重した。
「僕自身がFA権を行使していますからね。もちろんチームとして必要だという意思は絶対表示します。でも、最終的に決めるのは選手自身。それを僕は絶対に尊重しないといけない。残ってくれたら『ありがとう』ですけど、抜けられたら仕方がない。逆に出ていったら『頑張れよ』と思います」
選手が「移籍の自由」を求めて誕生したFA制度は、もうひとつ大きな狙いを込められて作られた。「球界の活性化」だ。
市場の原理を考えると、能力の高い選手がマーケットに出れば、球団間で獲得競争が起きる。すると選手の価値=年俸は上がるため、球団は収益を上げていかなければならない。そうして球界は活性化されていく。
しかし、日本のプロ野球はそうならなかった。選手がFAをしにくいように「宣言」というステップを設けたことで、この制度はほとんど活用されないまま30年を迎えようとしている。
もし宣言という仕組みがなく、メジャーリーグのように取得年数を満たせば自動的にFAになれば、日本のプロ野球はどう変わるだろうか。谷繁氏はこう考えている。
「ある意味、もっと厳しい世界になると思います。今の日本の仕組みは、選手がかなり優遇されているところがあります。だから、甘えが出てくる気がしますね。甘えというのは、来年も契約してもらえるということです。
たとえば6年在籍したら全員FAになり、他球団に行ける権利を自動的にもらえるようにすると、いろんな道が開けてくると思います。逆に、そこで選手生活が終わる可能性もある。そうなると今の制度以上に、1年、1日をおちおちしていられないシステムになると思うんです。危機感が常にありますから。それは悪いことではないと思います」
4 / 5