移籍しにくい日本のFA制度。2度FA宣言の谷繁元信は「選手に甘えが出てくるシステムは変えるべき」 (3ページ目)
【金額はプロとしての評価】
そうして2001年のオフ、谷繁氏はFAを宣言。他球団への移籍を模索することにした。
ベイスターズから国内の他球団に移ることをうしろめたく感じ、まず候補に定めたのがメジャーリーグだった。渡米してショーケースを行ない、サンディエゴ・パドレスからオファーを受けたが、金額的に満足できなかった。
同時に、中日から熱心なラブコールを受けた。内容的にも好条件だった。
愛着のあるベイスターズからも慰留され、最終的な選択肢はふたつ。熟慮の末に新天地への出発を選び、4年契約を結んだ。それから45歳になる2015年まで現役を続け、監督を引き受けることになるとは夢にも思わなかった。
谷繁氏はそうした自身の経験を踏まえ、選手がFAを宣言するには「3つの動機」があると言う。お金、優勝したい気持ち、自分の立場だ。この3つが複合的に絡み合い、選手は決断する。
「根底にあるのは、どうすれば自分をさらに高められるかということです。お金については大手企業のヘッドハンティングと同じで、会社を移れば以前の社にいるより給料が上がりますよね。獲得する会社は、今より組織をよくしていこうと投資するわけですから。プロ野球も一緒だと思います」
プロ野球選手に対する評価は「年俸」という形で示される。この点は一般社会と変わらない一方、プロ野球選手はたとえ"推定"でも給料が世間に報じられる点で異なる。ゆえに移籍を決断した際、時として「結局、カネかよ」と言われる場合が出てくる。
プロ野球は「夢を売る商売」として成り立っているのも事実で、周囲から批判されても仕方ない。多くの選手はそう受け止めている。
ただし、どんな職業でも働く目的のひとつは、対価を得ることにある。
あらためて、プロ野球選手は特殊な職業だ。現役選手が明かしにくい胸の内を谷繁氏が代弁する。
「何のためにプロ野球選手をやっているかを考えると、『給料を高くもらいたい』と誰もが絶対思っています。たとえば1億円もらえるところを『5000万円でいいです』とは、まず言いません。金額はプロとしての評価だと思うんですね。
将来的にほかの人が自分の面倒を見てくれるのかと言ったら、そうではない。最終的に全部、自分のところに返ってきます。野球を辞めたあとも含めて、すべて自分で切り開くものです」
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