【大学野球】スポーツ推薦も専用グラウンドも寮もなし 西南学院大野球部が唯一無二の組織づくりでチームを強化する理由
まるで企業のようなチーム運営を行なう大学野球部が福岡県にある。九州六大学野球連盟に所属する西南学院大(福岡市早良区)は、福岡大や九州国際大といった強豪がひしめくリーグで2023年春に9季ぶり7度目の優勝を果たし、全日本大学野球選手権(神宮)に出場。
2022年ドラフト会議では辰見鴻之介内野手(楽天)が同大学から蓬萊昭彦(ほうらい・あきひこ)さん(元西武など)以来、43年ぶりとなる指名(育成)を受けると、今秋ドラフト候補には身長190センチの大型外野手・栗山雅也も控えるなど、近年着実に力をつけている。
野球部主将やクリエイティブチームリーダー、アセスメントリーダーらの2025年度の西南学院大野球部幹部たち photo by Uchida Katsuharuこの記事に関連する写真を見る
【選手が選びたくなる環境づくり】
私立大学ながら、スポーツ推薦も専用グラウンドも寮ない。学校からの活動費も体育会で一律と限られているなかで、どのようにしてチームを強化しているのか。2013年よりチームを率いる東和樹監督に、その秘密を聞いた。
「選手集めはいっさいしていません。この時代、いい噂も悪い噂もすぐに広がっていきます。高校生にウチの野球部を選んでもらうためには、まずは身内の選手たちが本気になり、親も子どもも『西南の野球部はいいよ』と言ってもらえるような環境にすることが大切だというところからチームづくりが始まりました」
大学野球は4年秋までリーグ戦があり、実質2年3カ月ほどで終わる高校野球のほぼ倍の長さだ。もちろん、全員がレギュラーとして神宮に出場することを目指して入部するワケだが、その過程でケガをしたり、モチベーションが保てなくなるなど、さまざまな理由で選手をあきらめ、学生コーチやマネジャーといった裏方へ回ることも少なくない。東監督は、そういった学生のために「選手以外の組織をつくりたい」と考え、それが形になったのが、就任3年目の2015年からだ。
「4年の春までベンチに入っていた選手が『秋は選手ではなく、サポーターになります』と言ってくれて、その子が立ち上げのきっかけですね」
ひとりの選手から始まった野球部内の「組織」は、今では『クリエイティブチーム』として、チーム運営の中枢を担うまでに成長を遂げた。
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著者プロフィール
内田勝治 (うちだ・かつはる)
1979年9月10日、福岡県生まれ。東筑高校で96年夏の甲子園出場。立教大学では00年秋の東京六大学野球リーグ打撃ランク3位。スポーツニッポン新聞社でプロ野球担当記者(横浜、西武など)や整理記者を務めたのち独立。株式会社ウィンヒットを設立し、執筆業やスポーツウェブサイト運営、スポーツビジネス全般を行なう