阪神ドラフト6位は今年も「隠れ即戦力」。「右打ち強打者」の豊田寛はなぜ下位指名だったのか (3ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Sankei Visual

【プロ垂涎の右打ち強打者なのになぜドラフト6位?】

 SUBARUとの試合で豊田が放った安打は本塁打だけだったが、ボールの見逃し方、ファウルの打ち方がよかった。

 投球を捕手のミットに収まるまで追いかけると、頭が動いてしまう。これをやってしまうと外のボールに逃げていく誘い球も追いかけるようになってしまい、バッティングを崩してしまう原因になる。

 豊田は、自分のインパクトゾーンを見下ろす感じでスイングに入るから頭が動かない。打ちにいってもボールと判断すれば見送れるし、逆に言えばいつでもバットを出せる体勢にある。つまり、自分のポイントまでしっかりボールを見極めて叩けるから、ファウルでもいい打球になる。

 どのチームも必要としている「右打ちのスラッガータイプ」なのに、どうして6位まで指名されずに残っていたのか。あるスカウトがこんな話をしてくれた。

「夏の甲子園で優勝した時の主軸だし、いいものを持っていることはみんな知っていました。でも、その後に成長を感じなかった。一度リストから消した選手を、再度候補に上げるのはスカウトとしてなかなか難しい。盛り返してきたな......と思っても、本当にそうなのかと、ついつい用心深く見てしまう。いくらすばらしい活躍をしたとしても、なかなか上位では指名しづらい。獲得すべきかどうか、迷った球団はあったと思いますよ」

 近本光司、佐藤輝明......今季はジェリー・サンズが頑張ったが、オフに退団。阪神外野陣に「右打ち」が欠乏していることは明らかだ。今シーズンの中野のように、気がつけば不動のレギュラーになっている......豊田にはそんな期待を抱かせる魅力が詰まっている。

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