ビッグボス、名コーチも惚れ込む打撃センス。「令和のイチロー」と称された元巨人・山下航汰に吉報は届くか (2ページ目)

  • 菊地高広●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Murakami Shogo

 新庄監督は「気になった」と語るスローイングだが、高校時代を思えばだいぶ上達している。健大高崎高時代に通算75本塁打を放った山下が育成ドラフトまで残った理由は、スローイング難にあった。現在は守備を売りにできるレベルとは言えないまでも、最低限の水準まで高めている。

【名コーチは「育成ドラフトで入るバッターではない」と断言】

 そして、これまで多くの目利きが山下の打撃の才能を認めてきた。そのひとりが、巨人、広島で名打撃コーチとして名を馳せた内田順三さん(現・JR東日本アドバイザー)である。内田さんは巡回打撃コーチを務めていた2019年、高卒ルーキーだった山下のスイングを見て、「今まで見てきたなかでもトップクラス」と惚れ込んだ。

「打球の質を見て、これは育成ドラフトで入るバッターじゃないなと。大きな始動ではないのに、パンチ力を出せて広角に強い打球が打てる。オリックスの吉田正尚みたいなタイプでした」

 内田さんが「今まで見てきた」選手を振り返れば、その「トップクラス」がいかに重い言葉かを理解してもらえるだろう。広島なら正田耕三、江藤智、金本知憲、緒方孝市、新井貴浩、鈴木誠也。巨人なら阿部慎之助、坂本勇人、岡本和真といった打者たちが内田さんの薫陶を受けている。内田さんは現在の山下についても、「大学生で言えばまだ3年生なんだから、まだまだこれからですよ」と力強く語る。

「僕の考えなんだけど、有鉤骨をやる(故障する)ヤツはいいバッターが多いんですよ。昔から原(辰徳)にしてもそう。ようはスイングが強いということですから」

 トライアウトに臨む際、山下は関係者に配られる資料の「アピールポイント」の項目に「積極的に振っていくバッティング」と記している。その言葉どおり、山下はファーストストライクから積極的に振っていく打撃を見せた。

 だが、いい当たりは出るのだが、ヒットがなかなか生まれない。

 石井将希(前・阪神)と対戦した第1打席ではセカンドゴロ。神戸文也(前・オリックス)との第2打席はセンターフライ。吉田一将(前・オリックス)との第3打席もセンターフライ。永野将司(前・ロッテ)との第4打席は外角低めのストレートに手が出ず、見逃し三振。風張蓮(前・DeNA)との第5打席はファーストゴロ。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る