ビッグボス、名コーチも惚れ込む打撃センス。「令和のイチロー」と称された元巨人・山下航汰に吉報は届くか

  • 菊地高広●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Murakami Shogo

「ジャイアンツの山下くんって、ファームで首位打者(2019年)獲ってるんですよね。面白いですよね」

 12月8日、メットライフドームで開かれた12球団合同トライアウト。前半を終えた段階で取材に応じた新庄剛志監督(日本ハム)は、「気になる選手」として高野圭佑(前・中信兄弟/元・阪神)、金田和之(前・オリックス)、中村和希(前・福井ワイルドラプターズ/元・楽天育成)とともに、山下航汰(前・巨人育成)の名前を挙げた。

トライアウトでは6打数1安打だった元巨人の山下航汰トライアウトでは6打数1安打だった元巨人の山下航汰この記事に関連する写真を見る 新庄監督は「でも」と断って、こう続けた。

「ちょっと肩のほうが気になったかな。もし、ウチが獲るのであれば、DHでも面白いかなと思いますね」

 起用法まで踏み込んだ具体的なコメントだったが、新庄監督は「自分は(監督)1年目でペーペーなので」と獲得権限がないことを明かし、こう語った。

「ひとりでも多く獲りたいですけど、球団の方針もあるので。僕はこの選手がよかったと報告はします。でも、あとは何十人ものミーティングで決まるので」

 一方、山下はトライアウト終了後に新庄監督が自分の名前を挙げたと報道陣から告げられると、「本当ですか?」と上気した様子を見せた。「昨日の夜から緊張していた」と語るほど、この日にかける思いは強かった。

【イチロー以来となる入団1年目でのファーム首位打者】

 山下は今回のトライアウトに参加した野手の中で、要注目の存在だった。2018年育成ドラフト1位で巨人に入団すると、ルーキーイヤーの2019年にはイースタンリーグで打率.332(リーグ1位)、7本塁打、40打点の好成績をマーク。高卒1年目でファームの首位打者を獲得した選手は、イチロー(元マリナーズほか)以来である。

 だが、プロ2年目の2020年に右手有鉤骨を骨折し、歯車が狂ってしまう。3年目の今季はイースタンリーグでわずか21試合の出場、打率.226、1本塁打、6打点に終わっている。身長2メートルの高卒ルーキー・秋広優人が脚光を浴びるなか、山下の存在感はすっかり薄くなっていた。球団としては4年目も育成選手契約を結ぶ意向だったが、山下は環境を変えるためトライアウトの受験を決めたのだった。

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