元阪神スカウトが明かす原口文仁、岩崎優の獲得秘話「決め手は生活態度と極秘情報」 (2ページ目)
アマチュア選手がプロで活躍できるかを判断する材料のひとつに、"伸びしろ"と言われるものがある。たとえば、現時点で肩の強さをどのくらい備え、動作を改善すればよくなる余地はどれほど残されているのか。ウエイトトレーニングに取り組めば、体はどの程度大きくなりそうか。
そうした技と体に加え、心の強さも推し量る必要がある。メジャーリーグでは「メイクアップ」と言われ、伸びしろを計るためにも重要な要素だ。
NPBのスカウトは規定により、アマチュア選手と直接会話することができない。スカウトは監督や周囲から情報を集めたり、練習態度を視察したりするなどして、目利きの力が求められる。中尾氏は原口の生活環境から芯の強さを感じ、将来性に期待をかけた。
「彼の置かれている環境が、精神面を強くしている部分があったんです。プロでやっていくには、ハートの弱い子はダメ。キャッチャーとしてそれほど飛び抜けたものはなかったからレギュラーになれるかはわからなかったけれど、結果、バッティングでチームの戦力になりました。オールスターに出てホームランを打ちましたし、自分が担当した選手があれだけ活躍しているのはすごくうれしいです」
原口は一軍未出場の2012年に腰の故障で育成契約となったものの、2016年に支配下登録されると打棒を発揮して5月の月間MVPを獲得、オールスターに出場する。2019年には大腸癌を患ったが、不屈の精神で同年復帰し、チームが優勝を争う今季は代打で戦力になっている。
その原口と同学年で、国士舘大学を経て2013年ドラフト6位で入団したのが左腕投手の岩崎優だった。今季16年ぶりのリーグ優勝を狙う阪神でセットアッパーを務め、東京五輪では侍ジャパンの金メダル獲得に貢献している。
「たぶん3球団くらいしか調査書を送っていないと思います。球持ちがよくて、身長もあって腕も長いから、ひょっとしたら化けるかなという部分がありました」
中尾氏がそう振り返るように、大学時代の岩崎は決して多くの注目を集めたわけではない。185センチと高身長のサウスポーだが、球速は140キロ未満。それでも中尾氏は伸びしろを感じ、球団に獲得を勧めている。
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