大谷翔平の活躍に門田博光は「ワシの頭では理解できん。スーパーマンや」 (3ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Sankei Visual

「なんとかというあれ」とは、申告敬遠のことだ。ちなみに、門田は23年の現役生活のうちシーズン最多敬遠は7回あり、20個を超えた年も4度あった(最多は1987年の24個)。集中力を大切にするがゆえ、敬遠された時の苦しさも深く味わってきた。

「歩かされることが増えるなかでひとつ気をつけなあかんのは、自分で自分の打席を読み始めたらあかんということ。『絶対打ってやる』と思って打席に入ったのに歩かされた時、逆に『ここは歩かされるな』と思ったのに勝負された時......それだけで気持ちが狂わされ、次の打席でも戻らないようになる。だから、自分で勝手に決めつけないと、そこは常に思って打席に入っとった」

 8月末のある試合で、大谷が7点リードの3回、二死二、三塁の場面で申告敬遠され、ニュースになったことがあった。その話を向けると、門田はこう返してきた。

「切り替えたらええと思うやろ? でもな、プロのレベルでやっている勝負はそんな簡単なものやないんや。わずかなことで狂いが生じてくるんや」

 45号を打った時点で残り11試合。最終盤の展望を尋ねると門田は言った。

「いつも言うでしょ? バッターは1球で不調になることもあるし、1球で調子が戻ることもあるって。まして、彼は1週間で6本打った男やからね。ここで1本出ることで、どうなっていくか......。周りを見ずに、ひたすら自分のスイングだけに集中して、1試合にあるかどうかの1球をとらえられるか。ここの勝負や」

 しかし、その後も大谷のペースは上がらなかった。4試合で13四球のメジャータイ記録を記録するなど、四球攻めが続いた。

 この報道に触れた時、閑古鳥が泣くグラウンドで人知れず一塁へ歩き続けた門田の姿が浮かんできた。今のようにニュースになって騒がれることもない時代、ひたすら感情を押し殺し、四球を受け入れるしかなかったのだろう。

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