楽天・早川隆久の驚くべき投球理論と言語化力。「すごくマニアックな話になりますよ」 (2ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Jiji Photo

 それを3週間後のプロデビューまでに、見事に改善したのである。

「僕には絶対無理で、『そんなに簡単にできるのかよ!』って思います」

 沢村賞投手で解説者の川崎憲次郎氏がそう語ったほど、レベルの高い話だ。早川は長年のクセをどうやって直したのだろうか。

「自分のなかではピッチトンネルを意識しています。球種ごとにピッチトンネルを一緒にするには、リリースポイントが同じことや、その誤差を縮めることも大事。真っすぐをイメージしたなかで、少し握り方を変えたり、腕の振り方を変えたり、真っすぐに近づけるにはどうすればいいかをイメージして体を使っています。そういう面では、再現性も割と高いほうだと思っています」

 ピッチトンネルとは、打者から7.2メートルほどの場所にあるとされる"仮想空間"のことだ。この地点までに打者は球種やコースを判断する必要があると言われ、逆に投手はそれより打者寄りで変化させることで打ちにくくする。近年、重要性を説かれる論理だが、早川はこれをイメージすることでストレートとスライダーの腕の振りを一致させたという。

 川崎氏も驚くほどの修正をわずか3週間で行なった裏には、一流投手たちを見て盗み、聞いて学んだこともある。

「先輩方にアドバイスをいただいて、考え方として変わった感じはあります。広島の森下(暢仁)さんが、『ピッチャーはいかにバッターを騙せるか。腕を振り、真っすぐの軌道で変化球を投げれるかが大事』と言っていました。田中(将大)さんのスプリット、松井(裕樹)さんのスライダーもそうですよね」

 メジャーリーグでは昨今、好投手の条件のひとつとして「deception」が挙げられる。「騙すこと」という意味で、まさに早川が口にした内容だ。プロの高いレベルに飛び込んだからこそ、一流投手たちに刺激や学びを得ながら自分の技に磨きをかけられている。

 加えて、学生時代からの蓄積も大きい。

 木更津総合高校時代に甲子園を沸かせた早川だが、早稲田大学進学後はすぐに活躍できたわけではなかった。突き抜けるきっかけになったのが、ロッテやメジャーで活躍した小宮山悟監督のアドバイスだった。

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