川崎憲次郎が今季バケたセの投手4人を診断。阪神の変則右腕は「球質が汚い」

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Jiji Photo

川崎憲次郎が語る今季バケた投手@セ・リーグ編

 阪神と巨人がデッドヒートを繰り広げる今季のセ・リーグ。菅野智之(巨人)が不振で東京五輪の日本代表を辞退、大野雄大(中日)が沢村賞に輝いた昨季ほどの成績を残せていないなか、目立つのは成長中の投手たちだ。

「柳はいいですね。プロに入った時から、相当いいピッチャーでした」

 解説者の川崎憲次郎氏に「今年バケた投手」を聞くと、真っ先に挙がったのが柳裕也(中日)だった。1988年に沢村賞を獲得し、同じ右腕投手でもある川崎氏はどこに才能を感じているのか。

青柳晃洋は2015年ドラフト5位で阪神に入団した27歳青柳晃洋は2015年ドラフト5位で阪神に入団した27歳この記事に関連する写真を見る「ひじの高さがすばらしいんですよ。だから、このピッチャーは勝てるだろうなと思っていたら、最初は勝てませんでした」

 2016年ドラフト1位で明治大学から中日に入団した柳だが、1年目は1勝、翌年は2勝に終わった。続く2019年は11勝と才能の片鱗を見せたものの、昨年は右腹直筋の故障もあって6勝にとどまっている。

 それが今季は16試合で7勝5敗、リーグ3位の防御率2.42。奪三振112は2位以下を大きく引き離す数字だ(今季の成績は7月16日時点。以下同)。

 柳のストレートは平均球速140キロ強にすぎないなか、誰より三振を重ねられる秘密は「ひじの高さ」にあると川崎氏が説明する。

「(投球動作の)トップの時、ひじの高さが耳の位置にあるとするじゃないですか。普通はそこから下がるけど、柳は下がらない。逆に上がります。だからボールに角度がつき、威力が増すわけです」

 今季好調の背景には、トップコンディションを維持できていることもある。春季キャンプ序盤で「体が重い」と感じると、ふたケタ勝利を飾った2年前より5キロ重い90キロだった。それから食事量をコントロールし、今季はベスト体重の85キロを保っている。

 そうしたコンディショニングと投球メカニクスが見事に合致し、スピードガン以上に質の高い球を投げられている。川崎氏が続ける。

「自分が動きやすい体重を維持でき、さらに投球動作の体重移動もうまくいっています。それにひじの位置が合わさり、ストレートがいい。ビックリするほど速いわけではないけど、見た目以上にキレがいいですね。ストレートがいいことで、ほかの球種も生きてきます」

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