ソフトバンクからの5位指名に嘉弥真新也は「なんで?」。自分のことより先輩投手のドラフト漏れに驚いた
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連載『なんで私がプロ野球選手に⁉』
第4回 嘉弥真新也・後編
異色の経歴を辿った野球人にスポットを当てる新シリーズ「なんで、私がプロ野球選手に!?」。第4回後編は、体重56キロの平凡な高校球児から球界を代表する左キラーに成り上がった嘉弥真新也(ソフトバンク)の、企業チーム挑戦以降の顛末を紹介する。
2011年のドラフトでソフトバンクから5位で指名された嘉弥真新也(写真左上) 宮里伊吹木(いぶき)は今も、11年前に嘉弥真が放った言葉が忘れられない。
「もう野球やるつもりはないんだよな。一緒に行かんと、俺ひとりなら行かんよ」
企業チームの名門・JX−ENEOS(現・ENEOS)からの練習参加の誘いを受けたにもかかわらず、嘉弥真の幼稚な言動に宮里は驚いた。
「自分から進んで何かをやるタイプじゃないことはわかっていたけど、まさかここまでとは......」
ビッグ開発ベースボールクラブ監督の下地剛が、JX−ENEOSサイドに「宮里も練習参加をお願いできませんか?」と頼んでくれたため、宮里も嘉弥真についていくことになった。
8月の暑い太陽が照りつける練習場。一世一代のアピールの舞台にもかかわらず、嘉弥真はウォーミングアップの時点で「すみません、気持ち悪いです」とダウンしている。
嘉弥真は当時を苦笑交じりに振り返る。
「アップの段階で暑くて、きつくて......。あとは気疲れですね」
一方、JX−ENEOSはなぜ嘉弥真に声をかけたのか。監督の大久保秀昭に聞くと、「前段があるんです」と当時の事情を明かしてくれた。
「嘉弥真の前に、大城(基志)という投手がいました。大城が名桜大にいた時、沖縄でキャンプを張る亜細亜大の生田(勉)監督から『面白いピッチャーがいるよ』と教えてもらったんです。実際によくてウチに入社したのですが、大城は2年でプロに行く可能性があった。そこで『二匹目のドジョウ』を探していたところ、また生田監督から『ビッグ開発に面白いピッチャーがいるよ』と教えてもらったんです」
ビッグ開発は監督の下地が「より高いレベルで野球をしたいなら、ウチの環境を利用して力をつけて、スカウトの目に留まりなさい」と選手に伝えている。企業チームへの移籍はウエルカムだった。
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