「ボールをよく見て」は間違い? 秋山翔吾、浅村栄斗が唱える新常識
5年ほど前にメジャーリーグで流行し始めた"フライボール革命"は、日本球界にも大きな影響を及ぼした。
学童野球から高校野球、プロまで「ボールは上から叩け」と長らく言われてきたが、長打を打つには一定の打球角度と打球速度が必要だ。フライボール革命以降、そうした条件があらためて知れ渡った。柳田悠岐(ソフトバンク)が口にする「かち上げる」という表現は、この新常識をよく表している。
秋山翔吾はどんな感覚でボールを捕まえているのか ほかにも、100年以上の歴史を誇る日本の野球界には、"定説"のように受け継がれる指導が多くある。そのひとつが、「ボールをよく見て打て」というものだ。
「物理的に目をつぶって打てるわけがないから、『ボールをよく見なさい』という話になるわけですよね」
以前、西武時代の秋山翔吾(現シンシナティ・レッズ)とそんな話になったことがある。彼の言葉どおり、そもそもボールを見なければ打てない。だから、学童野球の指導者はそうした指示を大声で送るのだろう。
だが、「ボールをよく見て打て」という指導は、打席で結果を残すという意味で本当に正しいのだろうか。
先日、中学硬式野球の約200選手にオンラインで講演をする機会があった。冒頭でこの質問を投げかけると、指名した3人のうち、ふたりは「正しい」と答えている。「ボールを見ないと打てないから」という、物理的な根拠だった。
対して、もうひとりは「正しくない」と回答した。「ボールをずっと見ていると、打てない」というのだ。
では、プロ野球で"一流"と言われる打者は、どのような感覚で打席に入っているのか。3年前、ふと疑問に思って聞いたことがある。
「ボールをよく見たら、打てないですよ」
球界を代表する右打者、浅村栄斗(楽天)は即答した。
「プロの選手はみんな、ボールはよく見てないですよ。 打つ時は、感覚で打っているので。僕の場合、『ボールをよく見る』ではなく、『長く見る』というか、『タイミングをゆっくりとる』という意識。ボール自体はよく見ないです」
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