2021.01.28

大杉勝男は若松勉に対し「一歩引いていた」。八重樫幸雄が明かす2人の関係

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi
  • photo by Sankei Visual

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【夜中に寝ていても、突然素振りを始めた】

――前々回、前回と、今は亡き大杉勝男さんについて伺ってきました。連載50回目の今回も、さらに大杉さんについてお願いします。

八重樫 ああ見えて、大杉さんはものすごく神経質でした。遠征先でよく同じ部屋になったんだけど、僕が寝返りを打つだけでも、大杉さんは目を覚ましちゃうんですよ。だから、完全に大杉さんが熟睡するまで、僕は息をひそめてじっとしていた。そして、「完全に寝たな」と思った時に、僕もようやく安心して眠れたんです。

1970、80年代のヤクルトで活躍した大杉勝男(左)と若松勉(右)――大変でしたね(笑)。

八重樫 とっても大変でしたよ。逆に僕が熟睡している時には、真夜中に突然ガサッと音がすることが何度もありました。大杉さんは常にバットを枕元に置いていたから、気になることがあったら僕が寝ていようがお構いなしに起きて、それが何時であっても、部屋の中でずっとバットを振っていましたから。

――八重樫さんが寝ているのに(笑)。

八重樫 そう。横になっている僕の上で、ビュンビュンとバットを振っている音が聞こえるんだけど、危なくて起きるわけにはいかない(笑)。そういう意味でも神経質というか、繊細な人でしたね。でも、「やっぱり、ここまでの大打者はこういう努力をするんだな」って刺激を受けたよ。僕なんて、一度寝床に入ったら朝まで起きないですから。

――仮に「バットを振りたいな」と思っても、大杉さんが眠っていたらそういうわけにもいかないし、後輩はじっと我慢するしかないですね。

八重樫 僕がバットを振りだしたら、大杉さんも起き出したと思います。そして、「いいかハチ、そんなスイングじゃダメだ」って指導が始まったんじゃないかな(笑)。大杉さんは真面目で面倒見のいい人だったから。僕のあとに大杉さんと同部屋になることが多かったのは、小川(淳司・現東京ヤクルトスワローズGM)だったけど、彼も大杉さんには気を遣ったと思うよ。