必殺球はない。でも、有原航平がメジャーでやっていけると言える理由 (2ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Koike Yoshihiro

 大学時代とプロ入り後、何度か有原と言葉を交わしたことがある。決して声を張ったりせず、冗談を言うわけでもなく、おとなしいというか、品があるというか、こちらが質問したことにきちんと答えてくれる選手だった。

 当時の雰囲気からは"メジャー挑戦"など、まるで察することはできなかったが、有原を見ていて、以前、プロの現場に身を置く人から言われた言葉を思い出した。

「野手は誰にも負けない一芸があればプロに挑んでもいい。でもピッチャーは一芸じゃダメ。逆に欠点のないピッチャーが高い給料をもらえるんですよ、プロは」

 まさに、有原というピッチャーはこれに当てはまるのではないか。コンスタントに145キロ前後のストレートを投げられて、ギアが上がれば150キロ台に到達する。「有原の○○」といった必殺球はないが、カウント球にも勝負球にもなるカットボールにチェンジアップ。さらにスライダー、ツーシーム、フォークといった低めに出し入れできるボールもあって、制球力も安定している。ボールの「出し入れ」の技術なら、日本のプロ野球でも有数の投手である。

 189センチの長身オーバーハンドでありながら高精度の制球力。両サイドのゾーンが広いと言われるメジャーなら、まさに腕の見せどころだろう。

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 ちなみに、日本での6年間通算の有原の与四球率は2.09。四球の少ない投手は、日米問わず歓迎される。安定した投球テンポがバックを守る野手にも好影響を及ぼし、それが援護にもつながる。そんなことを考えていたら、レンジャーズ・有原の今シーズンが楽しみになってきた。

 飛び抜けた"一芸"はなくても、ピッチャーに必要な要素をすべて兼ね備えていて、走者を背負ってからのけん制やクイックも達者にこなす。メジャーの強打者をねじ伏せるようなボールはないが、きっちりとコーナーを突き、絶妙にタイミングを外す。派手さはなくても、そつのないピッチングを粛々と展開して、順調に白星を積み上げていきそうだ。

「まだ日本にはこんな投手がいたのか......」。メジャースカウトたちの日本人投手に対する評価や見方を変えるかもしれない。それだけの実力が有原には備わっている。

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