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鈴木翔太は阪神で再生なるか。8年前に見た驚きのピッチング (2ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Sankei Visual

 最後の夏は、それなりに注目されていたが、意外な伏兵に足元をすくわれ準々決勝で敗退。全国的にはほとんど無名のまま秋のドラフトを迎えることになった。

 ドラフトの少し前、また鈴木のもとを訪ねた。全身をしなやかに躍動させながら投げ込むストレートは、以前見たときと同じぐらいの勢いがあった。

「まだ体が細いんで、お餅をたくさん食べて、(体を)大きくしようと思っています」

 以前会った時よりもハキハキ話せるようになっていて、ずいぶんと大人になったなぁと感じた。心身とも成長しており、「この先、どんなすごい投手になるのか」という期待感しかなかった。

プロ野球もったいない選手たち2021>>

 監督室にお邪魔すると、広島のスカウトの方がおられ、こんな話を聞かせてくれた。

「昨日の会議で1位の候補に入りました。ウチのオーナーが翔太くんの大ファンになりまして......」

 松田元オーナーが、スカウト会議で見た鈴木の映像にひと目惚れしたというのだ。長身のスリム体型で、オーソドックスな右のオーバーハンドの本格派......伝え聞く「オーナー好み」の投手にピタリとはまる。

 中日、広島のほかにも、鈴木を高く評価している球団はいくつかあった。プロがこぞって高く評価した選手だ。凡才なわけがない。ただ、これまでは幾度となくケガに見舞われ、持っている才能を発揮できずにいた。

 とはいえ、8年目の選手に育成契約なのだから、阪神だって「働いてくれたら儲けもの」くらいの気持ちだろう。ただ、こういう時にアッと驚くような仕事をやってのけた選手を何度も見てきた。

 昨年10月、ファームの試合で投げている鈴木を見た。1イニングのリリーフだったが、140キロ代後半のストレートをコンスタントにマークし、ファームとはいえ打者を圧倒していた。このストレートを継続して投げることができれば──再び支配下を勝ち取り、一軍のマウンドに戻ってこられるはずだ。

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