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「軽い気持ちで挑戦があっさり変化」
潮崎哲也の人生を変えた魔球誕生秘話 (2ページ目)

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki
  • photo by Sankei Visual

 とはいっても、マウンドから見るとスピードは遅いし、試合で使えるようないい変化球とは思えなかったんです。だから、キャッチボールでしか投げていませんでした。

 でもある試合で相手にボコスカ打たれるものだから、キャッチャーのサインを無視してシンカーを投げてみたんです。するとキャッチャーが捕れなくて......。「すごくいい球じゃないか」と。それで急遽サインを決めて、投げるようになったんです。

 その時、僕のシンカーは練習よりも実戦向きなんだということが、そこで初めてわかりました。

 それ以降はビックリするくらい、相手に打たれなくなりました。夏の大会でも決勝まで進むことができましたし。ただ、試合はずっと先発で投げていたんですけど、最後まで背番号は5のままの2番手ピッチャーで......それが残念でしたね(笑)。

 僕にとってのシンカーのイメージは、山田久志さんのようにストレートと同じ速さで右打者の膝もとでスッと落ちる球なんです。でも僕のシンカーは、110キロくらいのスピードでゆっくりと大きく変化するボールだったので、イメージするシンカーの軌道とは明らかに違いました。

 事実、プロで僕の球を初めて受けてくださったブルペンキャッチャーの方からは、「おまえのシンカーを初めて捕った時、思わずケツが浮いたよ」と言われました。スピードが遅くて変な軌道で落ちるから、キャッチャーは捕球の反応が遅れるんでしょうね。みなさんはシンカーのイメージが強いでしょうが、本来は別の球種だと思うんです。

 また、シンカーは「リリースの瞬間にヒジを曲げるイメージ」があるんですが、僕の場合は投げる角度を決めたら、そのまま腕を振るだけなので、ヒジや手首のひねりはまったく必要ないんです。よく「ヒジに負担はかからないの?」と聞かれるのですが、故障は1回もないですからね。

 ただ、手首と腕を平行に振ることによって、ボールが中指と薬指の間からスポンと抜けていくので、普通の人はコントロールがつきにくいと思います。投げる人によっては、手からボールが抜けないこともあると思います。

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