ムーアの決め球を隠し球に。巨人打線を翻弄した甲斐拓也の「配球の妙」
日本シリーズ第3戦はソフトバンクが4−0で巨人を下し、4年連続日本一へ王手をかけた。ソフトバンクはマット・ムーアが7回無安打と好投し、盤石の継投で1安打完封。巨人は初回に得点圏の好機を逃すなど、7回途中3失点と粘ったエンジェル・サンチェスを援護できなかった。プロ野球解説者・川口和久に第3戦のポイントについて聞いた。
巨人打線を7回無安打に抑える好投を見せたソフトバンク先発のムーア ジャイアンツは負けるべくして負けた----そんな印象を強く抱いた試合でした。
初回、先頭・吉川(尚輝)のショートゴロを牧原(大成)がファーストへ暴投し、ノーアウト二塁といきなり絶好の得点チャンスを掴んだ。それなのに、2番の松原(聖弥)が送りバントを簡単にミスしてランナーを進められず、無得点に終わった。
この拙攻が、先発のサンチェスのピッチングにも影響を与えてしまったのではないか? そう勘ぐってしまうくらい、重要なポイントでした。
サンチェスの立ち上がりはよかった。1回裏にグラシアル、2回裏に松田(宣浩)を三振に仕留めたように、150キロ台のストレートを中心に、カットボールとスプリットを織り交ぜながら外角、内角、外角とテンポよく攻め、ソフトバンク打線に的を絞らせなかった。
そのテンポが急変したのが3回裏です。2アウトから周東(佑京)のセカンドゴロを、吉川がスライディングキャッチのファインプレーを見せながら、無理な体勢から投げたことでバッターランナーを得点圏に進めてしまった(結果は内野安打とエラー)。バッテリーに焦りが生じたのか、次の中村(晃)に内角甘めのスプリットをホームランされ、絶対に与えてはいけない先制点を許してしまいました。
ここからサンチェスは、人が変わったようにキャッチャー・大城(卓三)のサインに首を振るようになり、ストレートで押すようなパワーピッチングになってしまった。要するに、バッテリーの信頼関係が崩れてしまったわけです。相手投手陣の力を考えれば、この一発で勝敗は決してしまいました。
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