ノーヒット・ノーラン、2ケタ勝利...
ヤクルト小川泰弘、再飛躍の理由 (3ページ目)
小川は好調の要因として「ストレート中心に押していく投球ができている」と語っていたが、ノーヒット・ノーラン達成後は真っすぐの割合がさらに増えている。
「やっぱりストレートは(ピッチングの)基本ですし、あの試合でストレートを使うことで攻めの姿勢になると感じました。これからもストレートをしっかり使っていきたいと思います」
ちなみに、小川の今シーズンの最速は148キロ。今の時代、特筆すべき数字ではないが、大きな武器となっていることは間違いない。ここで小川の真っすぐについて、興味深い話を紹介したい。それは今年3月のことで、高津監督がルーキー・奥川恭伸のブルペンでの投球を視察したあとのことだった。
「(奥川は)思っていた以上に縦と横の角度がありました。角度をつけるのはなかなか難しいことで、みんなそこを目指しているし、それができれば150キロと同じくらい、打者にとっては嫌なことだと思います。ウチでいえば(高橋)奎二は横の角度があって、小川は身長は高くないけど、縦の角度を持っていますよね」
小川の"縦の角度"とはどういうことなのだろうか。数日後、雄平にそのことについて質問すると、少し考えてこう答えた。
「ライアン(小川)の真っすぐは、ボールが下から浮き上がってくるような......これも縦の角度なんです」
今から2年前の2月、小川は二軍キャンプ(宮崎県西都市)で黙々と汗を流していた。前年のシーズン終盤に右ヒジを疲労骨折し、開幕は絶望的だった。そんな小川に練習後、声をかけると、こう語ってくれた。
「右ヒジはまったく問題ありません。今は下半身と体幹を強化しています。人生はうまくいかないことのほうが多いですからね。僕としては目標に向かって一喜一憂せず、今できることが何なのかを考え、焦らずにやっていきたいと思っています」
今の小川を見ていると2年前のこの言葉がしみじみと思い出される。小さな変化の積み重ねを大きな変化に変える──これもまた小川が持つ才能のひとつである。
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