宮西尚生「投げたくない時もあった」。北の鉄腕が語る折れない心の作り方 (3ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 寺崎江月●協力 cooperation by Terasaki Egetsu

◆鷲見玲奈さんインタビューカット集 第2弾!!>>

 宮西の著書では、さらにダッシュの本数やセット数を決めない理由、シーズンオフにしかサプリメントを摂らない理由なども明かされている。いずれもリリーフの心作りにつながる話だ。

 また、戦いの中で結果に一喜一憂せず、感情の波を作らないことも徹底した。チームのムードを上げるため、意識的に感情を表に出すことはあっても、頭の中は常にクール。ヒーローインタビューに極力登場しない理由についてもこう語る。

「基本的に僕はしゃべり好きで、勝った試合終了直後はテンションも上がっています。本当は弾けて、ファンと一緒に盛り上がりたい。でも、『今日はいいピッチングだった』としても、明日はわからない。気持ちの波を作ってしまって隙ができ、投球に影響することは絶対避けたいんです。

 だから、区切りの記録などを達成して『どうしても......』という時以外、基本的にヒーローインタビューは遠慮させてもらっています。まれにお立ち台に立ったとしても、大して面白いことも言わず、ごくごく普通の受け答えになっているとしたら、理由があるんだとファンの人にもわかってもらえれば助かります」

 宮西の出身地は、お笑いコンビのダウンタウンの故郷としても知られる兵庫県尼崎市。「大阪の町より大阪っぽい」とも言われる"濃い街"の育ちだけに、ヒーローインタビューのような舞台は大好物のはずだ。

 しかし、弾けたい気持ちをグッと抑え、明日に備える。独自の考えから生まれたメンタルコントロール術だ。野球人以外にも通じる心作りが、宮西の13年を支えてきた。

 宮西は8月12日に通算350ホールドを達成し、元中日の"先輩左腕"岩瀬仁紀が打ち立てた「15年連続50試合登板」の偉業も見え始めている。

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