宮西尚生「投げたくない時もあった」。北の鉄腕が語る折れない心の作り方
◆前編:常識破りの投球術。「使えねぇな」から屈指のリリーフへ>>
「北の鉄腕」が語るリリーフの極意 後編
歴代1位のホールド数を誇る"北の鉄腕"こと日本ハムの宮西尚生。初の著書『つなぎ続ける心と力 リリーフの技&受け継ぐ魂のバイブル』(廣済堂出版)の中でも語られているように、偉業達成には前編で触れた投球術だけでなく、メンタル面の充実も欠かせなかった。常に緊迫した場面を託されてきた球界屈指のリリーバーは、いかに重圧に屈せず、失敗に心折れることなく投げ続けてきたのか。
350ホールドを達成し、中田翔(右)と共にポーズをとる宮西尚生(左) リリーフは先発投手と違って常にチームに帯同し、試合が始まれば緊張状態の中で出番に備える。肩やヒジに負担がかかることはもちろんだが、宮西はメンタル面の"疲労"について次のように語る。
「リリーフは精神面で疲れが溜まってこらえきれなくなり、成績を落としていくケースが多いと僕は思っています。いくらすばらしいボールを持っていても、タフな心が伴っていないと、リリーフとして継続的に成績を残すことは難しい」
時には失点を重ね、前に投げていた投手の白星を消してしまうこともある。いかにタフな心が大切か、宮西は身を持って理解している。
「過去には僕も、心が疲れてグラウンドに行きたくない、投げたくない、と思う時がありました。誰でも気持ちが乗っている時は体が動く。逆に、気分が乗らない時、心が疲れている時はすごく体が重く感じる。そういったことから、『体を動かしているのは心だ』と痛感しました」
リリーフにのしかかる重圧には、「『抑えて当たり前』という周りの目もある」と宮西は言う。
「(左のサウスポーである)僕も経験がありますが、左対左のワンポイントリリーフの場面でも『抑えて当たり前』と見られる。クローザーや、勝ちパターンで出てくる投手にも同様の見方をされます。それだけ信頼して、期待してもらっている裏返しですけど、抑えて当たり前という中で投げるのは相当しんどいんです」
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