巨人・直江大輔が持つ投手としての
「品」と「牙」。高校最後の夏に見せた熱投 (3ページ目)
巨人の木佐貫洋スカウトだった。それを見た時「いい人に見てもらっているな」と思った。長い手足をしならせて、きれいなオーバーハンドから丹念に低めを突く根気強いピッチング。木佐貫スカウトの現役時代のピッチングが、そのまま直江に重なった。
木佐貫スカウトなら、"150キロ"も"魔球"もないけど、直江の才能をありのまま球団に推してくれるだろう。その時は巨人に入るなど予想もしなかったが、いまにして思えば、それも立派な"縁"だったのかもしれない。
そして高校最後の夏。「投げないかも」と思いつつ、足を運んだ岡谷南高校戦。松商学園が負けるわけがないと決めつけていた試合は、"岡谷南有利"のまま進んでいく。
2対4と2点ビハインドの4回、無死一、二塁となったところで直江がマウンドに上がる。7球のピッチング練習。その時から、いつもの直江ではなかった。ピッチングに"怒り"がこもっていた。
猛烈な腕の振りから放たれたストレートは140キロ台を超え、試合終盤には145キロまで達していた。
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ポーカーフェイスで投げることも大事なことだが、これからもっと伸びていかなくてはいけない高校生だ。なりふり構わず勝負に身を投じる直江のピッチングを何度も見てきて、そんな"狂気"を内面に秘めていてほしいと思っていたところ、最後の夏にようやく直江の"牙"を見たような気がした。
あれから丸2年が経ったプロ初先発のマウンド。やはり、露骨な闘争心を見せたりはしない。しかし、自分の持ち球に自信を込めて投げ込む本物の"攻めのピッチング"。あの高校最後の夏に見た"牙"は失われてはいなかった。
直江が松商学園のエースとして投げまくっていた頃、ネット裏からひっそりと視線を注いでいた木佐貫スカウトは、いまは巨人の二軍投手コーチを務めている。直江の入団の道をつくってから、木佐貫スカウトも投手コーチとしてファームのグラウンドに立っていた。自分を見出してくれた人からピッチングを教わり、そして一軍に導かれる。
そんなめぐり合いもあり、直江は順調に成長を遂げた。はたして、プロ2度目のマウンドで今度はどんなピッチングを見せてくれるのか。若武者が躍動すれば、巨人の連覇はさらに加速していくだろう。
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