無傷の6連勝。楽天・涌井秀章
「V字回復」の理由を斉藤和巳が解説

  • 石塚隆●文 text by Ishizuka Takashi
  • photo by Kyodo News

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 昨年わずか3勝にとどまった楽天・涌井秀章だが、今シーズンは開幕から好調を続けている。8月5日のソフトバンク戦では、球団初のノーヒット・ノーラン達成はならなかったものの、1安打完封という圧巻のピッチングを披露し、開幕から無傷の6連勝を飾った。はたして、好調の理由とは何なのか。かつてソフトバンクの絶対的エースとして2度の沢村賞に輝いた斉藤和巳氏に聞いた。

昨年オフ、金銭トレードでロッテから楽天に移籍した涌井秀章昨年オフ、金銭トレードでロッテから楽天に移籍した涌井秀章 過去2シーズン、調子が上がらず実力を発揮できなかった涌井ですが、今シーズンは非常にいい状態で投げていると思います。開幕から連勝を重ね、結果を出しているということは、いいボールを投げられている証拠です。

 とくに、今シーズンはコントロールのよさが目立ちます。涌井はストレートがシュート回転する傾向があり、昨年それが目立っていたのですが、今年はいいときの状態に戻ってきています。

 彼も試合後のコメントでよく言っていますが、ストライク先行でカウントを整えることができているのが大きい。結果的に自分有利のシチュエーションをつくるという意味では、リズムを崩さず投球できていますよね。安定感がありますし、ランナーを出したとしても、彼の持ち味である粘りの投球ができている。

 たとえば7月8日のソフトバンク戦(PayPayドーム)では、立ち上がりを打たれ6失点しながらも5回124球を投げ、勝利投手になっています。苦しい状況であっても、粘り強く投げ、自軍の打線やゲームの流れが変わるのをあきらめずに待つ。そういった部分のコントロール能力というか、最低限の仕事をしてくれますから、ベンチとしてはとてもありがたい存在ですよね。

 また移籍をして、心機一転、メンタル面においてもいい刺激があるのかもしれません。楽天は打線が強力ですし、チームの雰囲気もいい。そういったことも含め、すべてがいい方向に進んでいるのかもしれませんね。

 彼ももう34歳ですし、もうひと花咲かせたいという思いは強いでしょう。もちろん20歳前後の時のように真っすぐで空振りを取るようなスタイルで勝負はできませんが、ボールの質を見る限り、まだまだ元気はあります。

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