プロの世界でもがくドライチたち。
「このままでは終われない」 (3ページ目)
2014年のドラフトの目玉だった安樂智大(楽天)も苦しい時期が続いている。
高校時代のマウンドで踊るような躍動感のある投球フォームが影を潜め、プロ入り後の5年間で5勝14敗。高校2年時に最速157キロを計測したスピードは、プロでは常時140キロ台前半にとどまっている。
高校2年春の選抜高校野球大会で準優勝を遂げた際に、5試合で通算772球を投げたことは、国内外で大きな論争を呼んだ。プロで活躍できなければ、高校時代の投球過多が「酷使」と論じられる大きな根拠になる。それは自らの意思でマウンドに立った安樂本人にとって不本意だろう。それだけに、一層の奮起が求められる。
投球時に軸足を折らずに角度を出そうと試みた時期や、ウエイトトレーニングの成果で体は大きくなったものの、動作にキレを感じない時期もあった。一方で毎年のように故障に襲われ、昨年10月には右ヒジのクリーニング手術を受けている。
6年目の今季は中継ぎとして7試合に登板し、3年ぶりの白星を挙げるなど防御率0.87と奮闘中(7月20日現在)。球速は140キロ台前半でも空振りを奪うだけのキレがあり、両コーナーを丁寧に突く細心さとカットボールやフォークを織り交ぜる器用さで新境地を見せつつある。
ほかにも、野手では2015年ドラフト1位の平沢大河(ロッテ)、オコエ瑠偉(楽天)、2017年ドラフト1位の清宮幸太郎(日本ハム)、中村奨成(広島)といった高卒の好素材が殻を破れずにいる。
また、2018年ドラフトで指名が集中した根尾昂(中日)、藤原恭大(ロッテ)、小園海斗(広島)といった有望株も、高卒2年目の今季はまだ二軍暮らしが続いている。彼らのポテンシャルを持ってしても、順応するまでには時間がかかる。プロ一軍のレベルの高さには脱帽するばかりだ。
とはいえ、野手はきっかけひとつで大化けするもの。とくに清宮はチャンスを与えられている今季、なんとかきっかけをつかんで野球人生の分岐点にしたいところだ。
プロ入り後に投球感覚を見失いどん底を味わいながら、今季ブレークの兆しを見せている寺島成輝(ヤクルト)のような例もある。たとえ足踏みが続いたとしても、ドラフト1位のポテンシャルを信じて、じっくりと開花の時を待とう。
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