2020.07.21

プロの世界でもがくドライチたち。
「このままでは終われない」

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kyodo News

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 ドラフト1位──。高い契約金を得て、将来を嘱望されてプロ野球界へと入ってきた金の卵。だが、弱肉強食のプロの世界では、その力を発揮できずに停滞している逸材も少なくない。

「期待外れ」と切り捨てるのは簡単だ。それでも、ドラフト1位という評価を勝ち取った選手には、大いなる可能性が眠っていることを忘れてはならない。堅い殻を破れずにいるドラフト1位選手のなかから、とくに夢を抱ける大器を紹介したい。

 真っ先に名前を挙げたいのは、田中正義(ソフトバンク)である。

ソフトバンク工藤監督(写真右)から指導を受ける田中正義 2016年ドラフトの目玉であり、5球団の競合の末に、ソフトバンクが当たりくじを引いた剛腕である。入団から4年目を迎えたが、プロ通算未勝利が続く。なお、同年ドラフト1位で入団した投手(広島・加藤拓也、DeNA・濱口遥大、ヤクルト・寺島成輝、中日・柳裕也、日本ハム・堀瑞輝、ロッテ・佐々木千隼、西武・今井達也、楽天・藤平尚真、オリックス・山岡泰輔)のうち、0勝は田中だけだ。
※加藤拓也は2019年に登録名を矢崎拓也に変更

 創価大時代の状態のいい田中のボールを知る者からすれば、歯がゆくて仕方がない。メンタル面の弱さを指摘する声も聞こえてくるが、田中本来のボールを投げられれば、メンタルなど問題ではないとさえ思える。それくらい、田中のストレートは飛び抜けていた。

 同じ150キロ台のボールにしても、田中の剛球は重量感も加速力も違う。投球練習を1球見ただけで「モノが違う」とうならされる。

 大学3年の6月には、大学日本代表としてNPB選抜と対戦。当時若手だった山川穂高(西武)に対してうなりをあげるストレートを続け、詰まったレフトフライに抑える名勝負を演じた。その後の7打者からは連続三振を奪い、ひとりだけ格の違うところを見せつけた。そんな田中本来の強いボールは、プロではお目にかかれていない。

 アマチュア時代から肩・ヒジの故障が続いていたことも響いているのだろう。関節への負担を考慮してか、ややおとなしいフォームに見える時期もあった。