2020.05.09

田中将大が叫んだ「伝説の8球」。
楽天を初優勝に導く最高のアウトロー

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Kyodo News

「あんな(厳しい)ところに投げられて、無理に手を出した感じですね。打ちにいく準備はしていましたけど、あそこにビシッと来るとは思っていなかったので、『あっ』という感じでした。見逃していても、たぶんストライクと言われています。バッターは最初からあんなところに目つけをしていません。だいたい甘めを狙いながら、多少外れても振りにいく感じです。あんなところにずっと投げられたら、打てないですね」

 状況的には、楽天がこのまま1点を逃げ切れば悲願の優勝決定、西武が逆転打を放てば同一カードで3試合続けてサヨナラ勝ち。そんな劇的な紙一重の勝負を分けたのは、鬼神のような田中のピッチングだった。

「引いたら負けやと思っていました」

 試合後、大勢の報道陣に囲まれた田中は"伝説の8球"について、シンプルにそう振り返っている。

 最高の場面で、最高の力を出し切る。心技体を結実させ、求められる結果を常に出し続ける──。

 MLBに渡る前年、語り継がれる伝説を残した2013年シーズン。田中が楽天に初のリーグ優勝を引き寄せた最後の1球には、球史に名を刻んだ男の凄みが凝縮されていた。

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